2011 Fiscal Year Annual Research Report
定量位相顕微鏡による石鹸薄膜中における非平衡模様の生成と成長の研究
Project/Area Number |
21550023
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
藤原 久志 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (40264949)
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Keywords | 石鹸膜 / 定量位相顕微鏡 / 超薄膜 / 非平衡 |
Research Abstract |
本研究では非平衡条件下にある石鹸薄膜中に生じる模様生成および成長機構の解明を目指し、平成23年度は石鹸膜の定量位相顕微鏡観測の精度向上とデータ取得・解析を行った。 定量位相顕微鏡観測の精度向上では、684nmのスーパールミネッセントダイオード(ファイバ出力)と顕微鏡対物レンズ(コリメート用)の組み合わせにより、低コヒーレンスながら高輝度かつ直進性の高い照明用光源を構成した。これによりコヒーレントノイズの少ない干渉縞画像が得られた。また干渉縞画像の撮影用に画素大きさが比較的小さい(4.4μm)CCDカメラを導入し、空間サンプリング周波数を向上させた。しかし、残念ながら所望の石鹸膜厚み測定分解能(1-2nm)は達成できなかった。その原因として、照明用光波面の歪みが考えられ、その改善には空間位相変調器の導入が考えられる。 上記の改良した定量位相顕微鏡で、試験的にオレイン酸ナトリウム水溶液から作製した垂直石鹸膜を観察したところ、石鹸膜内で400nm程度の急峻な膜厚変化が生じることが分かった。この膜厚変化は、これまで良く知られている「段階的薄膜化(stratification)」での階段状の厚み変化(一段10-20nm程度)に比べて遥かに大きく、石鹸膜研究における新たな知見と考えている。 一方、界面活性剤について、予備実験で用いた純石鹸の主成分であるオレイン酸ナトリウムを選択し垂直石鹸膜を作製したところ、円形の領域の成長が見られ、純石鹸のような複雑な模様(非平衡模様)形成は見られなかった。またオレイン酸ナトリウムにラウリン酸ナトリウム(純石鹸の副成分)を加えた混合水溶液から作製した垂直石鹸膜でも、やはり非平衡模様形成はみられなかった。実際の純石鹸には先述の二つを含めて数種類以上の界面活性剤が含まれており、今のところ、これらの複合作用によって非平衡模様が生じると推測している。
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