2009 Fiscal Year Annual Research Report
複素座標法と解析的微分法を用いた共鳴状態およびイオン化過程の理論的研究
Project/Area Number |
21550024
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藪下 聡 Keio University, 理工学部, 教授 (50210315)
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Keywords | 複素座標法 / 光イオン化 / 共鳴状態 / 自動イオン化 / 軌道指数最適化 / 複素基底関数 / 振動数依存分極率 / ファノ・プロファイル |
Research Abstract |
1.量子力学的共鳴状態は、有限の寿命で崩壊する一時的な準束縛状態である。特に、複素座標法を用いた電子系共鳴状態の計算には、束縛状態と共鳴状態を記述する実数基底と、連続状態を記述する複素数基底が必要である。数値計算を軽減するために、複素数基底の個数を最小限にし、かつ精度を落とさないように、複素数エネルギー固有値や振動数依存分極率に対する変分法を用いてその複素数軌道指数を最適化する計算方法を開発している。 2.これまで光イオン化断面積の計算のために、振動数依存分極率(以下では単に分極率とよぶ)について複素軌道指数を最適化する計算手法を開発してきた。複素基底関数法と分極率に対する変分原理を利用した光イオン化断面積の計算手法によって、光子エネルギー毎に最適化された複素軌道指数を持つ1,2個のガウス型基底関数を用いて、連続状態の情報が効率良く抽出できること、最適化された複素軌道指数は、自動イオン化領域で特異な振る舞いを示すことなどを見出した。今年度の研究において、次の点を明らかにした。(1)共鳴状態において断面積がファノ・プロファイルを描いて0になる振動数領域や、クーパー極小によって0になる振動数領域において、分極率は基底関数依存性を全く示さなくなる。(2)複素数基底関数が一つの場合、分極率の実数部分も虚数部分も、それぞれ複素数軌道指数を変数とする調和関数として振る舞うため、ラプラス方程式を満たす。(3)通常は実数値の軌道指数に対して分極率は特異性を示すが、(i)の振る舞いを示す特別な振動数において、この特異性は消え、分極率は軌道指数依存性を持たなくなり、このため最適化された軌道指数は特異な振る舞いを示すことを明らかにした。
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