2011 Fiscal Year Annual Research Report
複素座標法と解析的微分法を用いた共鳴状態およびイオン化過程の理論的研究
Project/Area Number |
21550024
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藪下 聡 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50210315)
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Keywords | 複素座標法 / 光イオン化 / 異方性パラメータ / 正則クーロン関数 / 複素基底関数 / 振動数依存分極率 / 複素Slater型基底関数 / WKB法 |
Research Abstract |
量子力学的共鳴状態は、有限の寿命で崩壊する一時的な準束縛状態である。複素座標法を用いた電子系共鳴状態の計算では、束縛状態と共鳴状態用に実数基底関数が、また連続状態用に複素数基底が必要である。数値計算を軽減し精度を高くし、特にドブロイ波長の問題依存性を反映させるために、複素数エネルギー固有値や振動数依存分極率に対する変分法を用いて、複素数軌道指数を最適化する計算方法を開発している。 昨年度、振動数依存分極率(以下では単に分極率とよぶ)を複素軌道指数に関して最適化する計算手法で1次摂動波動関数を求め、その虚数部分が正則クーロン解をかなり良く近似することを明らかにした。今年度は特に、連続波動関数の漸近領域における位相のズレを求め、さらにそれを用いて、光電子の空間分布を表現する異方性パラメータβの計算可能性を調べた。 1.水素原子の光イオン化において、複素軌道指数を持ったSlater型基底関数を5個使用し、分極率αが満たす変分原理に基づき、各光子エネルギー(ω)毎にその軌道指数{ζ_1}に関するαの解析的1次微分と2次微分を使ってNewton-Raphson法で{ζ_1}を最適化したところ、1s,2p,3d電子のイオン化断面積を非常に高精度に得ることができた。ざらに最適化した1次摂動波動関数は、原子核領域からr=20bohr付近まで正則クーロン解を高精度に表現した。 2.r=10~20bohrの領域でWKB解にマッチングすることで、漸近領域まで連続関数を補外し、位相のズレを簡単にかつ高精度に計算することが出来た。この結果、2pからの光電子の異方性パラメータβを有効数字3ケタの精度で得ることに成功した。3dからのイオン化においてもほぼ同様の精度を得た。 3.基底関数を複素数のGauss型にしたところ計算精度がかなり悪くなった。この場合の最適化手法、および、Slater型で最適化した複素数軌道指数のω依存性などは現在検討中である。
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