2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21550025
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
大島 茂 東邦大学, 理学部, 教授 (60168911)
|
Keywords | 光化学 / 蛍光増強 / 会合体 / 溶媒効果 / 分子軌道法計算 |
Research Abstract |
ナフトアントロン(NT)やバニリン、ベンゾベンズアントロンなどの溶液を脱気して吸収波長の光をあらかじめ照射(予備照射)しておくと、蛍光強度が著しく増大する。この蛍光増強は、溶質分子と溶媒分子との会合体形成によるものと推定し、その形成機構を解明することを目指して分光学的測定を行ってきた。平成21年度の研究では、蛍光増強が燐光性の物質で起こりやすいこと、それらの励起三重項状態と溶媒分子との反応によること、その反応は水素引き抜き反応に類似していることなどを明らかにした。平成22年度の研究では、NTのエタノール溶液を中心にして詳しい測定を行った。その結果、蛍光増強が照射光強度、溶液量、そして試料温度に強く依存することが分かった。すなわち、照射光強度が強いほど、溶液量が少ないほど、そして試料温度が低いほど会合体形成が容易になる。これらの実験結果は、溶質分子の励起三重項状態が生成すると直ちに近隣の溶媒分子と会合体を形成するのではなく、段階的に形成されていくことを示唆している。一つの溶質分子が複数回励起されることにより、構造を徐々に変化させて最も安定な会合体をつくっていくと考えられる。また、それに伴い溶媒和も強くなっていくと予想される。この成果を踏まえ、平成23年度では、蛍光増強の温度変化、濃度変化、溶媒依存性などをより詳しく調べ、さらに薄層クロマトグラフィーによる会合体の確認と同定も目指す。また、複数の溶質分子と溶媒分子を対象にして分子軌道法計算によりそれらの会合体の構造を調べ、実験データと矛盾しない構造を求める。これらの結果より、多環芳香族ケトンの蛍光増強が会合体に起因することを実証し、さらにその会合体の形成機構と構造とを明らかにできると考える。なお、平成22年度前半までの研究成果は、論文にまとめ公表した。
|
Research Products
(2 results)