2010 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下における臭素とヨウ素の分子相内構造相転移の探索
Project/Area Number |
21550029
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
竹村 謙一 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノスケール物質萌芽ラボ, 主席研究員 (20171671)
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Keywords | 分子性結晶 / 構造相転移 / 圧力誘起分子解離 / ダイヤモンドアンビルセル / 高圧X線回折 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高圧下で固体臭素とヨウ素の精密粉末X線回折実験を行い、分子相内に構造相転移が存在するか否かを明らかにすることである。過去のX線回折実験では分子相内構造相転移は見つかっていないことから、相転移があるとしてもそれにともなうX線回折パターンの変化はごくわずかであることが予想される。研究の成否は、融点が低く、再結晶して大きな結晶粒を作りやすい臭素とヨウ素をどのように微粉末化し、高分解能で信頼性の高い粉末X線回折パターンを得るかにかかっている。この目標のために、昨年度はグローブボックス、液体窒素冷却槽、カメラ付き顕微鏡、加圧治具、密閉型ダイヤモンドアンビルセル等の導入と整備を行った。今年度はこれらを使って実際に臭素の高圧粉末X線回折実験を行った。臭素はグローブボックス中低温で固化させ、乳鉢ですりつぶして粉末とした。これを低温のままダイヤモンドアンビルセルに封入、同じく低温下でヘリウムガス圧力媒体を充填した。準備した臭素について、PF-AR-NE1において最高圧力71GPaまで3回にわたり高圧粉末X線回折実験を行った。低圧で測定した回折リングは均一な強度分布を示し、臭素がきれいな粉末試料になっていたことがわかった。しかし加圧すると回折ピークは次第にブロードになり、指数毎の細かい強度変化をみることがむずかしくなった。リートベルト解析を行った結果でも原子座標値のばらつきが大きく、今回のデータからは構造相転移の有無を結論づけることはできなかった。ピークブロードニングの原因は、ヘリウム圧力媒体の量が少なすぎて試料が直押しされたためと考えられる。次回は臭素の量をうまくコントロールし、高分解能のパターンをとることをめざす。
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