Research Abstract |
本研究では,1つのホスフィンまたはシリル部位と3つのカルコゲノエーテル部位を持つ新規三脚型四座配位子E[C_6H_4(2-YR)]_3(1_<EY>:E=P or Si^-;Y=O,S,Se;R=i-Pr,t-Bu,etc)およびE[C_6H_4(2-CH_2YR)]_3(2_<EY>:E=P or Si^-;Y=O,S,Se;R=i-Pr,t-Bu,etc)を有する遷移金属錯体を合成して、その構造,性質,小分子の活性化能,触媒活性を明らかにし,E,Y,Rの違いによるこれらの金属錯体の性質の違いを系統的に解明することを目的としている。これらの金属錯体を用いることにより,N_2,CO_2,O_2,CO,エチレンなどの小分子を活性化し,その小分子を効率的に有用な分子に変換することが可能であると期待される。 既に我々は,配位子1_<PS>(R=i-Pr)を有するパラジウム錯体[PdCl(1_<PS>)]BF_4(R=i-Pr)(3)の合成に成功している。本年度の研究において,パラジウム錯体3とMeLiとの反応により,ジメチルパラジウム錯体[PdMe_2(1_<PS)](4)を合成した。さらに,4はクロロホルム中で反応して,クロロメチルパラジウム錯体[PdClMe(1_<PS>)](5)を生成することを明らかにした。ジメチルパラジウム錯体4は,還元的脱離反応によりO価パラジウム錯体[Pd(1_<PS>)](6)を与えることが期待され,その反応性に興味が持たれる。 また,2_<SiS>-H(R=i-Pr,t-Bu)と[PdCl_2(cod)]との反応においてC-Si結合の切断が進行し,パラジウム二核錯体[{[(2-RSCH_2)C_6H_4]Pd}_2(m-Cl)_2](7)が生成することを明らかにした。パラジウム錯体によるC-Si結合の切断反応に関しては,報告例が少なく,この結果は興味深い。
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