2011 Fiscal Year Annual Research Report
単離可能なヒドリドーカルコゲノラト白金錯体とアルキン類との反応の機構解明
Project/Area Number |
21550035
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
石井 昭彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90193242)
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Keywords | 合成化学 / 白金 / カルコゲン元素 / アルキン / ヒドリド |
Research Abstract |
前年度までに,リン配位子としてトリフェニルホスファイトを有するヒドリド錯体[PtH(SeTrip){P(OPh)_3}_2](1)(Trip=9-トリプチシル基)をフェニルアセチレン存在下で加熱すると,分子内環化が起こり対応するセレナプラチナサイクル2が生成することを明らかにしている。今年度はこの環化反応の反応機構について詳細に検討した。 1.まず,ヒドリド錯体1とファニルアセチレンの重トルエン溶液をNMR試料管中で加熱し,NMRで反応を追跡したとろ,環化体2とともにスチレンが生成していることを見いだした。つまり,フェニルアセチレンは触媒ではなく,水素受容体になっていることが明らかとなった。 2.次に,フェニルアセチレンがスチレンに水素化される際の位置および立体選択性を調べるために,重水素化された錯体[PtD(SeTrip){P(OPh)_3}_2]およびフェニルアセチレン-dを用いて熱反応を行った。その結果,白金上の重水素は,スチレンのα位に導入されること,及び,スチレンのβ位の重水素に立体選択性がないことが分かった。ただし,別途調製したtrans-β-重水素化スチレンと環化体2をトルエン中加熱したところ,シス-トランス異性化が起こることがわかった。 3.以上の実験結果から,ヒドリド錯体1とフェニルアセチレンとの反応では,まず,Pt-Hにフェニルアセチレンが挿入して[Pt(CH=CHPh)(SeTrip){P(OPh)_3}_2]が生成し,次いでトリプチシル基のC-H結合に白金が分子内酸化的付加して4価白金錯体となり,最後にビニル部位と水素が還元的脱離することでスチレンと環化体2が生成することが明らかとなった。 この反応性はリン配位子としてトリフェニルホスフィンを有する[PtH(SeTrip)(PPh_3)_2]の反応性とは全く異なり,ヒドリド錯体の反応性がリン配位子に大きく影響されることが明らかとなった.
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Research Products
(2 results)