2009 Fiscal Year Annual Research Report
炭素・炭素結合のラジカル開裂と再結合を示す揺動分子の合成と性質
Project/Area Number |
21550048
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
小林 啓二 Josai University, 理学部, 教授 (50012456)
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Keywords | キノノイド / ビラジカル / シクロヘキサジエノン / 光転移反応 / ニンヒドリン / シクロプロパン |
Research Abstract |
21年度の研究計画に記した、NMRによるダイナミクス検討のためのモデル化合物として、ヒドロキシ基のオルト位の置換基を非対称に変えた化合物の合成を目指して多くの実験を重ねた。しかし、シクロプロパン化合物に酸化する過程に困難があり、目的のジラジカル前駆体は合成できなかった。ただし、これら酸化反応で予想外の8員環ラクトン誘導体、キノノイド化合物など構造的にも、また反応挙動としても興味深い化合物が得られた。 また、既に揺動挙動が明らかにされている化合物のビラジカル状態をフラーレン(C^<60>)で補足する試みも計画通りに行った。TOFマスにより1:1で補足された化合物が確認されたが、単離と生成には至っていない。 揺動挙動が明らかにされているp,p-接合のシクロプロパンの前駆体、すなわち、2,2-bis(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)indan-1,3-dionの異性体に相当する2-(3,5-di-t-butyl-4-hydroxy)-2-(3,5-di-t-butyl-2-hydroxyphenyl)indan-1,3-dione(1)を合成し、その酸化反応を行ったところ、目的のスピロ化合物はえ生成せず、3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl基がシクロヘキサジエノン型のキノノイド環に変化し、かつ3,5-di-t-butyl-2-hydroxy基の酸素原子がキノノイド環のipso位に転移した5員環ジスピロ化合物2が得られた。この予期せぬ生成物の構造はX線結晶解析により確定した。この化合物も炭素-酸素結合の開裂によりビラジカルを与え、さらに再結合による揺動挙動を示すものと期待されるため、熱反応と光反応を試みた。2は熱に対しては安定であったが、光照射により環の拡大転移した化合物3が生成することがわかった。この反応過程では結合のホモリシスが起こってビラジカルが予想通り生じていると思われるが、そのまま再結合に戻ることなく、さらに反応が進行して3を与えたものと推定される。
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