2010 Fiscal Year Annual Research Report
炭素・炭素結合のラジカル開裂と再結合を示す揺動分子の合成と性質
Project/Area Number |
21550048
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
小林 啓二 城西大学, 理学部, 教授 (50012456)
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Keywords | キノンメチド / プロトン移動 / 包接結晶 / 擬似4中心分岐型水素結合 / ビンドン / スピロ共役 / スピロアミナール |
Research Abstract |
研究計画に従ってtetrakis(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)methaneの合成を目指した。合成経路の中間体としてquinone bis(4-hydoroxyphenyl)methide(1)の構造修飾体をいくつか得た。これらに4個目の4-hydoroxyphenyl基を導入する過程で困難に直面しているが、(1)が示す種々の興味深い性質を明らかにした。すなわち、酸あるいは塩基による可逆的クロミズム、キノンメチド骨格上でのダイナミックなプロトン移動、酸化による種々の新しいガルビノキシルラジカル誘導体の生成などである。 また、これらの合成過程で得られた2,2-bis(4-hidorxyphenyl-3-phenylphenyl)-1, 3-indandione(2)が、scissors形ホスト化合物として種々のホスト・ゲスト包接結晶を与えることを見出した。これら結晶のX線結晶解析を行った結果、疑似4中心分岐型水素結合とも言うべき超分子ネットワークのモチーフを明らかにした。ケンブリッジX線結晶データベースで検索したところ、このモチーフがごく一般的に存在することを見出し、これまで見過ごされていた重要な分子間相互作用であることをつきとめた。 さらに、C-C結合が開裂することによりpush-pull効果により安定化されたビラジカルが生成すると期待される化合物を、本課題の目的化合物として分子設計した。すなわち、ビンドンと種々のジアミン類との反応を試みたところ、ビンドンのC-C結合が開裂してジアミン類が縮合した窒素複素環化合物やスピロ型アミナール誘導体などが得られた。ここで得られたスピロ接合アミナール類は平面パイ共役系が大きくないにも拘らず着色化合物であることに注目し、DFT計算や電子スペクトルなどを検討したところ、スピロ共役を介した分子内電荷移動吸収が要因であることを明らかにした。
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