2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しい遷移金属―14族高周期元素多重結合錯体の合成と反応化学
Project/Area Number |
21550054
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 久子 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60291085)
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Keywords | 有機金属錯体 / 高周期元素 / ケイ素化学 / 反応化学 / 遷移金属 / シリレン錯体 / ゲルミレン錯体 |
Research Abstract |
本年度は、主に以下の成果が得られた。 1.新しいヒドリド(シリレン)錯体の合成 ケイ素上に水素の代わりにメチル基を持つヒドリド(シリレン)タングステン錯体を新たに合成し、そのX線結晶構造を決定した。ケトンとの反応を検討し、これまでに合成されたヒドリド(ヒドロシリレン)錯体との反応生成物とは異なり、分子内C-H結合活性化を伴うヒドロシリル化生成物を与えることを明らかにした。これにより、反応機構に関する幾つかの重要な知見を得た。 2.ヒドリド(ヒドロゲルミレン)タングステン錯体の反応性-ゲルミリン錯体の生成 ヒドリド(ヒドロゲルミレン)タングステン錯体とかさ高いメシチルイソシアナートとの反応を高温で行うとイソシアナートの1,2-水素化生成物と伴い、W≡Ge三重結合を持つゲルミリン錯体がほぼ定量的に生成するという全く新しい反応を見出した。中間体の単離も行い、速度論的研究から活性化パラメーターを求めた。 3.ヒドリド(ヒドロゲルミレン)ルテニウム錯体の反応性 ルテニウムのヒドリド(ヒドロゲルミレン)錯体とニトリル、イソシアナートおびイソヂオシアナートとの反応性を明らかにした。アルキルニトリルとの反応は、タングステン類縁体とは異なり、ニトリルがゲルマニウムに配位した錯体と原料錯体との平衡混合物となったが、アリールニトリルやイソシアナート類との反応は基本的にはタングステン錯体と類似しており、1,2-ヒドロゲルミル化による生成物が得られた。これちの研究から、M=Ge結合の分極の程度と反応基質のヘテロ原子とゲルマニウムとの親和性が反応経路を決める重要な因子になっていると考えられる。
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Research Products
(14 results)