2011 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属-ボランシグマ錯体を経由するホウ素化合物の脱水素カップリング反応
Project/Area Number |
21550056
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 泰朗 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10262099)
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Keywords | 遷移金属錯体 / ホウ素 / 触媒 / 光化学反応 / ボラン / 脱水素反応 |
Research Abstract |
金属錯体上でのホウ素化合物の脱水素反応において,金属配位圏内で何が起こっているのかを明らかにする目的で,重水素ラベリングしたボラン・アミン付加物を用いて脱水素反応を行なった。その結果,窒素上をラベルしたボランを用いた場合でも,ホウ素上がラベルされた生成物が得られることを見出した。これはアミン・ボラン付加物中で,反応の途上分子内の水素/重水素スクランブリングが起こっていることを示している。同様にホウ素および窒素上を全てラベルしたボランとラベルしていないボランの混合物を用いて脱水素反応を行なうと,軽水素と重水素の両方を含む生成物が得られた。これは脱水素反応において,分子間の水素/重水素スクランブリングも起こっていることを示している。 この興味深い結果を理解するために,DFT法による理論計算を行なった。その結果,反応中間体として存在する金属ヒドリド-アミノボラン錯体とアミン・ボランシグマ錯体との相互変換を経て水素/重水素スクランブリングが起こることを明らかにできた。この結果は,以前提案した脱水素反応の機構をよく支持するものであ。このように,本年度の研究により,脱水素反応において金属上でホウ素化合物がどのような挙動をしているかをかなり明らかにすることができた。 また本年度には数種類の金属錯体を用いてホウ素化合物の脱水素反応を試みた。その結果,より重い中心金属を含む電子豊富な金属錯体上では脱水素反応が遅くなることを見出した。いくつかの反応系については,その反応機構を理論計算により検討するとともに,ルテニウム錯体を用いた反応においては,反応中間体を単離し,その構造と若干の反応性を明らかにした。
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