Research Abstract |
白金錯体の,(1)副作用を軽減させる化学特性,(2)抗がん作用を強化させる化学特性,について昨年に引き続き研究を行った.ラットvivo腎毒性実験の結果,33μg/kg投与でシスプラチン腎毒性が1日後の血液BUN,クレアチニン値の上昇として認められたが,水溶性がアップしたアニオン3核白金,カチオン白金錯体は全く変動せず,腎毒性は認められなかった.抗がん実験では,シスプラチン33μg/kg投与では経過観察中にラットが死亡し,実際のアッセイは血液データに腎毒性が認められにくい投与量となった.投与量は,シスプラチンは8.25μg/kgに対し,腎毒性を軽減させたアニオン3核白金,カチオン白金錯体は16.5μg/kgと投与量を増やせた.白金化合物に代表される化学療法剤は投与量を増やして大きな抗がん効果を得ることが多く,水溶性向上による副作用軽減,抗がん効果アップが期待できる。長い半減期を有するアニオン多核白金化合物,加水分解しないカチオン型白金,パラジウム錯体はシスプラチン耐性に関与するカチオンシスプラチン錯体部分を持たないため,シスプラチンとは異なる抗がん作用機構を有することが抗がんパネルパターンから示された.これらの新型白金およびパラジウム抗がん剤がシスプラチン耐性がんに効くことが細胞レベルからも示された.抗がん活性の向上については,カチオン白金およびパラジウム錯体は特徴である芳香環スタッキングを強めることで,アニオン白金錯体は多核化により腎毒性を増やすことなく,それぞれ活性を向上でき,シスプラチンにとって代わる新規白金抗がん剤の開発に成功した.
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