2009 Fiscal Year Annual Research Report
複核有機金属ヒドリド錯体を用いる水中常圧水素による常圧二酸化炭素固定
Project/Area Number |
21550061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末延 知義 Osaka University, 工学研究科, 助教 (90271030)
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Keywords | 触媒・化学プロセス / 水素 / 光物性 / 地球温暖化 / 燃料電池 / 化学燃料 / 有機金属 / 水 |
Research Abstract |
水中において、常圧水素と容易に反応して生成する複核有機金属ヒドリド錯体を用い、常圧水素によって常圧二酸化炭素をギ酸として還元的に固定できる新規な二酸化炭素固定触媒系の構築を目的として研究を行った。 常圧水素との反応を目的とした新規複核有機金属錯体の合成 有機金属イリジウム塩化物をトリアクア錯体へと変換し、これを、別途ルテニウムアクア錯体と架橋型配位子とを反応させて得たルテニウム錯体と水中で混合して反応させ、イリジウム-ルテニウム複核アクア錯体を得た。これを水素還元することで、新規複核金属ヒドリド錯体を得た。また、新規単核イリジウムヒドリド錯体も合成した。一連の錯体合成反応は、水中でのほぼ定量的反応であり、環境負荷が小さいだけでなく、極めて高純度の錯体を得ることができた。イリジウム-ルテニウム複核アクア錯体については、ギ酸分解水素発生反応における極めて効率の良い水中触媒として作用することを見出し、その至適pHが決定できた。興味深いことに、重水中における水素発生速度と比較して極めて大きな速度論的重水素同位体効果が観測され、その温度依存性を検証した。有史以来、数多くの水素発生研究があるが、本研究の成果は、均一触媒系の水素発生におけるトンネル効果を観測した人類初の例となることがわかった。この成果が認められ、アメリカ化学会誌に速報として掲載された。 新規複核有機金属ヒドリド錯体の生成と反応ダイナミクス 新規に合成した各種有機金属ヒドリド錯体は、脱プロトン化により低原子価(イリジウム(I))錯体となる。生成した低原子価(イリジウム(I))錯体を酸により滴定する事で、その吸収スペクトル変化からヒドリド錯体のpK_aを決定する事ができた。様々なpHの水溶液中で、触媒的水素発生反応の速度定数、ギ酸生成の速度定数を決定し、ギ酸生成の速度定数が最大となるような至適pHを決定し、特許出願した。
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