Research Abstract |
本研究では,新たな「白金と11族元素からなる混合金属錯体」の開発を目指し,(1)非対称な構造のピラゾラト配位子を用いた混合金属錯体と,(2)異なるピラゾラト配位子を分子内に含む混合金属錯体の合成を行ない,それらの発光特性を調べた. 具体的には,(1)については,非対称な構造のピラゾラト配位子として,3-イソプロピル-5-メチルピラゾール(iPrMepzH)を架橋配位子として用い,白金-銀混合金属錯体[Pt_2Ag_4(iPrMepz)_8]の合成を試みた.白金の出発原料である[RtCl_2(C_2H_5CN)_2]にiPrMepzHを反応させると,主として2つの異性体が生成することが分かった.これらは,4つ全ての配位子がメチル基に近い方のN原子で配位した構造の錯体とメチル基に近い方のN原子とイソプロピル基に近い方のN原子がそれぞれシスに配置した構造の錯体であった.これらの2つの異性体をそれぞれ塩基で処理したのち銀イオンと反応させると,両異性体とも2つの白金ユニットが二量化し,それぞれのユニット間に銀イオンを4つ含んだ混合金属錯体が得られた.これらの混合金属錯体は若干異なる発光エネルギーを示すことより,置換基の向きの違いによる微妙な構造変化も発光エネルギーに影響を与えることが明らかになった.また,(2)については,インダゾールとジメチルピラゾールを架橋配位子とする混合金属錯体の合成に成功した.(1)の例でも分かるように,アルキル基を持つピラゾール誘導体と[PtCl_2(C_2H_5CN)_2】との反応では,4つのアルキルピラゾールが配位した単核錯体が得られる.しかし,インダゾール(BzpzH)はアルキルピラゾールに比べて塩基性が低く,[PtCl_2(C_2H_5CN)_2】との反応では,分子内に2つの塩化物イオンが配位した単核錯体[PtCl_2(BzpzH)_2]が生成する.[PtCl_2(BzpzH)_2】の塩化物イオンは,ジメチルピラゾールと置換反応が進行し,[Pt(Bzpz)_2(Me_2pzH)_2]が得られた.また,この単核錯体は銀イオンや銅イオンと反応させることで[Pt_2M4(Bzpz)_4(Me_2pz)_4](M=Ag,Cu)が得られた.Pt_2Cu4錯体は赤色の発光を示した.
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