2011 Fiscal Year Annual Research Report
高極性官能基の不斉水素化によるキラル化合物の効率的創出
Project/Area Number |
21550096
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 正人 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20293037)
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Keywords | 合成化学 / 触媒・科学プロセス / 水素 / 省エネルギー |
Research Abstract |
これまでに開発したCp^*Ru錯体(Cp^*:ペンタメチルシクロペンタジエニル)のカルボン酸誘導体の水素化反応に対する触媒活性を詳細に調査した結果,モレキュラーシーブスを反応系に共存させ水を厳密に除去すると触媒寿命が向上し基質適用範囲が拡大することが分かった.その結果,これまで高い化学選択性が得られなかった鎖状エステルやカルボキサミドから対応するアルコールが効率よく得られることが明らかとなった. またキラルジアミンやアミノホスフィン類を配位子とするCp^*Ru錯体を新規に合成して,その立体構造を明らかにするとともに不斉水素化反応に対する触媒機能を精査した.その結果N,N'-ジメチルシクロヘキサンジアミンをキラル配位子とするCp^*Ru錯体がα-アリールあるいはα-ベンジル-γ-ブチロラクトン類の動的速度論的分割を伴う不斉水素化の触媒として有効であり,リグナン類の合成中間体として有用なジオール類をエナンチオ選択的に与えることが明らかとなった.さらにルテニウム触媒と共に用いる塩基が,反応速度とエナンチオ選択性に及ぼす影響について調べた結果,ルテニウム触媒の量を塩基に対して相対的に増大させると反応速度のみならずエナンチオ選択性も向上するという興味深い知見が得られた. さらにシクロペンタジエニル配位子をプロティック官能基化したRu錯体を導く一般的な手法を新たに開発するとともに,錯体分子に組み込まれた新たなプロティック官能基が触媒機能に与える影響を調べた.その結果,ケトン類の触媒的水素化反応には大きな影響を与えないのに対して,その逆反応であるアルコール類の脱水素化反応を効果的に阻害することを見いだした.
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