2011 Fiscal Year Annual Research Report
パラジウム触媒を高度に活性化する新規配位子の機能開明とクロスカップリングへの応用
Project/Area Number |
21550100
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
星 隆 新潟大学, 自然科学系, 助教 (20303175)
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Keywords | パラジウム触媒 / ホスフィン / 配位子 / クロスカップリング / 鈴木-宮浦 / C-H結合活性化 / ビアリール / ヘテロビアリール |
Research Abstract |
最近,我々が開発した2つのかさ高いt-Bu基と下部のCp環にπ配位性ビフェニレンが置換したルテノセニル基を持つホスフィン配位子(R-Phos)は,鈴木-宮浦反応に用いるPd触媒の活性と安定性を高度に誘起する優れた機能性配位子である。本研究では,これまでR-Phosのt-Bu基をCy基に置換したCyR-Phosを開発し,R-Phosよりもさらに高い活性と安定性を誘起することを見いだしている。本年度は,Pd/CyR-Phos触媒系が非常にかさ高く反応性の低い2,6-ジイソプロピルクロロベンゼンとオルト置換アリールボロン酸との反応において,対応するビアリールの他に脱ハロゲン化物である1,3-ジイソプロベンゼンとボロン酸由来のホモカップリング生成物が生成することを見いだした。これは,触媒サイクルの最初のステップで生成するアリールパラジウム中間体が非常にかさ高いためにトランスメタル化反応を起こせず,代わりにボロン酸とアリール基を交換してより立体の小さいアリールパラジウム中間体と2,6-ジイソプロピルボロン酸を生成したためであると考えられる。生成した新たなアリールパラジウム中間体はボロン酸とトランスメタル化反応を起こしてホモカップリング生成物を与え,2,6-ジイソプロピルボロン酸は加水分解して1,3-ジイソプロベンゼンに変換されたと考えられる。このようなアリールパラジウム中間体とアリールボロン酸とのアリール基交換反応はこれまで報告が無く,また,この特異な交換反応は極めて立体的に込み入ったアリールパラジウム中間体を生成可能なPd/CyR-Phos触媒系の高い活性を反映している点も興味深い。塩化物をさらにかさ高い2,4,6-トリtert-ブチルクロロベンゼンにすると反応は停止してしまうが,塩化物をより反応性の高い臭化物に代えると反応は容易に進行し,この場合はアリール交換反応由来の生成物ではなくオルト位のtert-ブチル基のメチル基がアリール化された生成物を与えた。これは,本来不活性な脂肪族のC(sp^3-H)結合が活性化されたことを示しており非常に興味深い。
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