Research Abstract |
分子がキラリティを持ち,その分子鎖がらせん構造を描くL型ポリ乳酸(PLLA)は,高分子としては大きな圧電率を持っている.しかし,PLLAの圧電性は,無機圧電体と比べると,その大きさが一桁以上小さい上に耐熱性(ガラス点移転Tg~60℃)にも劣る等の欠点を持つ.そこで本研究では,最近高分子構造体を改質することで,注目を集めている超臨界CO_2処理を施すことで,圧電性の向上を目指した.PLLAを超臨界CO_2処理することで圧電率を大きくすることができた.PLLA filmの超臨界処理は以下の手順で行った.始めに,液体CO_2を加圧ポンプにより,PLLA filmを予め静置した容器に充填し,高圧にし,容器内を超臨界状態にした.処理条件は,圧力8MPa,温度40℃~138℃,時間20分である.未処理のPLLAの圧電率11.6mC/m^2に対して,80℃で超臨界処理を施すと21.9mC/m^2のように2倍近くまで向上していることが分かる.しかしながら,超臨界処理の温度が高温になるに従って圧電率が減少している.即ち,圧電率の向上には,最適な処理温度が存在することを意味する.次に超臨界処理した試料の圧電率の温度変化を測定した.通常のPLLAはガラス転移点(Tg)を超えると圧電率が減少する.それに対して,80℃で超臨界処理をした試料の圧電率は,Tgを超えても,未処理試料の二倍以上大きい.また,原子間力顕微鏡(AFM)を用い,高次構造を観察すると,超臨界処理を施すことで,PLLA film中で大きく発達している構造体が,小さな構造体に変化し,より均一化していることが分かった.
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