2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21550138
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤田 渉 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50292719)
|
Keywords | 有機ラジカル / 結晶構造解析 / 磁気的性質 / 相転移 / フェリ磁性 |
Research Abstract |
本課題ではネオジムやサマリウム等の希少金属元素に頼らず、豊富な元素(炭素、窒素、硫黄、水素、鉄等)を資源とした高機能磁性材料の開発に取り組んだ。分子性物質を元に高い磁気秩序転移温度(磁石として機能する温度)が見込まれるフェリ磁性体の構築を目指して、有機分子磁性カチオンと金属錯アニオン種の合成研究を行った。それらを組み合わせて両磁性種間における正負電荷のクーロン相互作用を利用した結晶内配列制御を行い、なおかつ強い反強磁性的相互作用を導入するための方法論を確立することを目指した。有機ラジカルBBDTA^+(S=1/2)と表1に示す6つの磁性錯アニオン(S>1/2)とを組み合わせ、塩結晶を作成したところ、Re錯体の塩、BBDTA_2ReCl_6とBBDTA_2ReBr_6とにおいて、それぞれ8.9Kならびに12.2Kでフェリ磁性転移を示す事がわかった。Re錯体では配位結合を通じて、Re原子側の不対電子が配位子側にしみ出すことが知られており、第3周期の遷移金属錯体と比べて、しみ出しは2倍以上であることが中性子線回折実験により確かめられている。Re化合物のこのような特徴がBBDTA^+とReBr_6^-との間に働く磁気的相互作用を強くし、高い磁気転移温度を実現したものと考えられる。昨年度大阪市立大学のグループが有機ラジカルカチオンとFeBr_4^-アニオンとからなる分子性フェリ磁性体を学術雑誌Journal of the American Chemical Societyに報告している(T_c=6.7K)が、本研究ではそれと比べて約2倍の転移温度を実現した。
|
Research Products
(4 results)