2009 Fiscal Year Annual Research Report
リサイクルシステムを利用した環境調和型置換反応の開発
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21550145
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅尾 直樹 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (60241519)
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Keywords | 有機硫黄化合物 / 金触媒 / 置換反応 / 炭素-硫黄結合 / ルイス酸触媒 |
Research Abstract |
有機合成化学は、医薬品や機能性材料の開発をはじめとして、様々な分野で重要な役割を果たしている。しかし、地球上の資源が有限であることを考えれば、アトムエコノミカルな環境調和型の分子変換技術の開発が急務であることは明らかである。これまでに様々な分子変換反応において、その原子効率の改善が図られてきたが、その多くが付加反応においてであり、置換反応ではまだ十分な検討が行われていない。そこで本研究課題では、様々な求核置換反応の効率化を目指し研究を行った。有機硫黄化合物は有用な生理活性を有するものや機能性材料として重要である。そこでチオール化合物を求核剤とする置換反応をベースとした炭素-硫黄結合の新規合成法について検討を行った。その結果、オルト位にアルキニル基を有する安息香酸エステルとチオールを金触媒存在下で反応させたところ、比較的穏やかな条件下で置換反応が進行し、種々のスルフィド化合物が収率よく得られることを見い出した。金触媒は、炭素-炭素三重結合をルイス酸的に容易に活性化することができることが知られている。そのため本反応は、安息香酸エステル誘導体のアセチレン部位を金触媒が活性化することにより、エステルのカルボニル酸素が電子不足となったアセチレン部位を攻撃して分子内閉環反応が起こると考えられる。この結果生じたピリリウム型双極性イオン中間体は、そのイソクマリン部位が脱離性の高い脱離基として機能するためにチオールの攻撃を受け置換反応が進行したと考えられる。
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