Research Abstract |
第四アンモニウム塩型抗菌剤についても対アニオンを適切に選ぶことで,室温で液体の塩,いわゆるイオン液体となることを見出した。この第四アンモニウムイオン液体型抗菌剤は水に難溶であるが安定に乳濁液するものが得られている。この場合,従来の第四アンモニウム塩型抗菌剤と異なり,気泡性が低く,水系媒体に適用できる比較的安全な抗菌剤として興味が持たれる。21年度よりベンザルコニウムカチオンとビス(2-エチルヘキシル)リン酸アニオンなどとのイオン液体の乳濁液について詳細な抗菌試験を行ってきた。その結果,興味深いことに,従来の,すなわち,塩化ベンザルコニウム水溶液と同程度の活性値が得られた。加えて,同イオン液体は従来第四アンモニウム塩型抗菌剤と異なり,カルシウムスケール防止剤の効果を阻害せず,循環式冷却水や水溶性切削油剤の抗菌剤として有望な結果も得た。現在,学術論文誌へ投稿準備を進めている。また,プラスチックとの相溶性が期待できる第四アンモニウムイオン液体型抗菌剤も得た。同薬剤が塩のため難揮発性であることに着目し,これを含むポリ塩化ビニルフィルムを作成して,非フタル酸系可塑剤としての可能性を調べたところ,粘弾性スペクトルからは相熔性と可塑性が示された。溶出試験においても水・ヘキサンへの溶出は検出されず,可塑剤としての要件を満たす結果を得た。さらに,同薬剤は低溶出性であるにもかかわらずフィルム表面に抗菌性能を付与することもわかった。これらの結果を国際会議等で論じた。 また,当該年度は同イオン液体のミセル溶媒抽出の剤としての基本的性質を論じ,これをLangmuir誌に投稿した。さらに,同イオン液体のアニオン性配位子としての検討を行い,トリスβ-ジケトナトEu(III)錯体に第二配位子として付加させた場合,従来の中性配位子の付加体よりも発光効率が向上することを見出した。Eu(III)錯体は紫外励起型白色LEDや有機ELの赤色発光体として期待されることから,当該年度はまずはこの知的創造の特許出願を急いだ。現在は論文誌への投稿準備を進めている。
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