2009 Fiscal Year Annual Research Report
PCB置換位置異性体に関する化学熱力学量の悉皆的調査および分子構造との相関
Project/Area Number |
21550149
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
牧野 正和 University of Shizuoka, 環境科学研究所, 准教授 (50238888)
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Keywords | PCB / 難分解性有機塩素化合物 / リスク・運命予測 / ガスクロマトグラフィー / キャピラリーカラム保持時間 / 置換位置異性体 / エンタルピーエントロピー補償 / 構造物性相関 |
Research Abstract |
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は代表的な残留性有機汚染物質であり、その環境動態・生物蓄積量が注視されている。PCBには209種類の塩素置換位置同族体が存在するが、生体へ重篤な影響が懸念される化合物はこの極一部であることが知られている。これは、PCBの評価には、同族体、特に質量数が同じ塩素置換位置異性体(以下単に異性体)の中から生体影響が懸念される化合物を分離・定量する必要があることを意味している。一般に、多環芳香族炭化水素を骨格としたハロゲン置換位置異性体数は膨大であり、その定量には異性体毎の分離が求められる。しかし、異性体の分子物性、特に分離評価に有益な情報を提供できる化学熱力学量に関する包括的な報告は、殆どないのが現状である。申請者は、異性体が示す化学熱力学量の評価をとおして分子構造-物性相関を解明し、それらの情報を公開かつ運命予測に役立つパラメータの提供を目的として本研究を進めている。本年度は、五塩素化ビフェニル(全46種の異性体)に対して、定温ガスガスクロマトグラフィーによる保持容量を悉皆的に測定し、van't Hoffプロットに基づいてキャピラリーカラム固定液層に対する吸・脱着エンタルピー(ΔH)、同エントロピー(ΔS)を算出することに成功した。これまで報告されているキャピラリーカラム保持容量の多くは、PCB分析を目的としているため昇温過程で観測されており、得られる保持容量は物理化学的意味がほとんどないことから有意義な化学熱力学量を算出することができたと言える。また、ΔHとΔSの間に補償関係が成立することを確認し、加えて、その値は単に五塩素化ビフェニルの溶媒接触可能分子表面積だけではなく、proximity effect(塩素置換位置の隣接効果)が深く関連していることも明らかにすることができた。
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