2011 Fiscal Year Annual Research Report
PCB置換位置異性体に関する化学熱力学量の悉皆的調査および分子構造との相関
Project/Area Number |
21550149
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
牧野 正和 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (50238888)
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Keywords | PCB / 難分解性有機塩素化合物 / リスク・運命予測 / 定温ガスクロマトグラフィー / キャピラリーカラム保持容量 / 置換位置異性体 / エンタルピーエントロピー補償 / 構造物性相関 |
Research Abstract |
昨年度、定温ガスクロマトグラフィー(T_<iso>-GC)により四塩素化ビフェニル(TeCB:全42種の置換位置異性体)の保持容量を悉皆的に測定し、van't Hoffプロットに基づいてキャピラリーカラム固定液層に対する吸・脱着エンタルピー(δ(ΔH))、同エントロピー(δ(ΔS))を算出することに成功した。今年度は、五塩素化体のデータ解析時に使用した統計的評価法をTeCBの観測結果に再適用し、本系における保持容量の自然対数値と温度との逆数の間に厳密な等平衡温度が存在するかどうか、およびδ(ΔH)とδ(ΔS)の間に補償関係(EEC)が成立するかを検証することに加え、六塩素化ビフェニル(HxCB:全42種の異性体)のT_<iso>-GC保持容量:測定に着手した。以下に実績を記す。(1)各異性体のvan't Hoffプロットが一点(この時の温度が等平衡温度Tc:θ則)に収束するかどうかを調査した結果、今回の測定温度範囲では明確な一点収束は観られなかった。(2)ΔG<Thm>(測定温度の調和平均T<hm>における保持容量の自然体数値)とδ(ΔH)とのプロットより両物理量に線形関係が成立するかどうか確認した結果、極めて高い線形関係(r^2=0.9783)が成立することがわかった。また、(3)(2)のプロットより算出される温度(Tc=969.9K)と、δ(ΔH)vs.δ(ΔS)プロットより得られる補償温度(Tc'=925.5K)と比較した結果、40K程度の差が生じているが、概ね一致していることが分った。(4)分散分析(繰り返しのない観測結果に関するTukey法)に基づいて(1)のプロットが測定温度域以外で一点収束する統計的可能性を調査した結果、その可能性は極めて高い(MS_<con>/MS_<noncon>=1756>>7.333)が、測定誤差も無視できない(MS_<noncon>/MS_e=365.5>>1.686)ことが分った。以上の結果、本系ではEECは成立しているとみなせるが、明確な等平衡温度は統計誤差のため確定出来なかった。一方、HxCBのT_<iso>-GCによる保持容量の測定は、置換塩素原子数が増加するほど保持容量測定に時間を有すること、クロマトグラムピークの形状がブロードすること等の困難さが生じているものの42種中20種まで観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガスクロマトグラフの故障により測定が一時滞ったが、交付金による機器の補修と部品購入により、悉皆的なPCBの物性測定が概ね進めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画の変更を予定していない。六塩素化ビフェニルのT_<iso>-G測定時間が3時間~12時間に及ぶこと、保持時間が長時間の場合ピークのブロード化が著しいこと等、原理的な課題が生じているが、再現性が確認できていることより精度よくδ(ΔH)、δ(ΔS)値を評価できていると考えている。
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