2009 Fiscal Year Annual Research Report
ナノインプリント技術を用いた有機薄膜太陽電池のデバイス化と高効率化
Project/Area Number |
21550170
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
迫村 勝 Yokohama National University, 工学研究院, 講師 (20235237)
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / ナノインプリント / 光エネルギー変換 / 有機半導体 / 導電性ポリマー / 走査プローブ法 |
Research Abstract |
p-n接合型有機薄膜太陽電池の有機層内で生成した励起子がその寿命内に拡散可能な距離L_Dは、一般的な条件では数十Å程度と見積もられる。従ってp-n接合面からの距離がL_Dを超える場所で光吸収により励起子が発生しても、その励起子は接合面には原理的に到達できない。一方、太陽光を無駄なく吸収するためには各層で、L_Dの十倍程度の膜厚が必要とされる。このミスマッチを解消する為に、現在多くのグループで検討されているのが、バルクヘテロ接合によるデバイスである。しかしバルクヘテロ型の場合p-n接合界面の無秩序な配置に起因する重大な欠点として、 i)アノードへ向かう正孔とカソードへ向かう電子が錯綜して再結合する ii)内部に孤立し、電極へのアクセスが閉ざされた発電ドメインが存在する などが考えられる。これらの欠点を解消するために平成21年度の研究では、カソード金属電極-有機層界面のナノ構造化を行い、キャリアの電極までのアクセス性を改善することを試みた。 ナノ構造化はナノインプリント法により行い、ポリチオフェンとC60によるブレンド膜に100nmの径と高さのピラー構造を転写することに成功、太陽電池へのデバイス化を行った。 ナノ構造デバイスによるI-V特性をフラット型によるものと比較したところ、ほぼ同様の曲線の形が得られることが確認された。従って、上部電極蒸着時に有機層のナノ構造化表面と金属層とのコンタクト形成には特に問題は無いと考えられる。しかし変換効率についてもその結果はフラット型とほぼ同等の効率となり、ナノ構造化による優位な改善は見られなかった。しかし今後、有機層の厚さ等、条件の最適化や金属表面での励起子消光の抑制などを工夫することにより更なる改善が見込める。以上のように本研究のデバイス化への基盤を築いたという意味で極めて意義深い研究が実施できた。
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