2010 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分子形燃料電池のイオノマー中の酸素拡散挙動の解明
Project/Area Number |
21550174
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
稲葉 稔 同志社大学, 理工学部, 教授 (80243046)
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Keywords | 燃料電池 / 物性実験 / イオン交換膜 / ガス拡散 / 酸素還元 / イオノマー / 物質移動 / 耐久性 |
Research Abstract |
平成21~23年の3年間で、PFSA膜であるNafion膜と炭化水素系電解質膜であるSPES-50膜、SPEEK膜を用いて、微小電極を用いる電気化学測定法により酸素物質移動挙動を解析し、化学的構造の違いによる酸素拡散機構の変化を明らかにする。これらの結果をもとに、耐久性向上、性能向上に適した電解質膜、イオノマー開発の指針を得る。平成22年度は炭化水素系膜(SPES-50膜、SPEEK膜)を用いて、これらを試料として同様の方法で酸素透過挙動を解析した。 測定試料として本年度は炭化水素系膜(BPSH膜、SPEEK膜)を用い、平成21年度に開発した微小白金電極(直径:100mm)を用いるポテンシャルステップクロノアンペロメトリー(PSCA)法により、PEFCの運転条件として想定される様々な温度(30~80℃、相対湿度50-90%)における酸素還元反応電流を解析した。微小電極を用いるPSCA法の電流一時間曲線の理論式を用いて、同時に拡散係数D、溶解度C、透過係数DCを求めた。 芳香族炭化水素系電解質膜の酸素透過率はNafion膜に比べて低く、高相対湿度条件(RH=95、90器)において、SPES-50はNafion膜の1/4以下、SPEEKは1/6以下であった。これは、酸素拡散性と酸素溶解性の両者ともにNafion膜に比べ劣るためであることがわかった。一方、芳香族炭化水素系電解質膜の酸素透過率は、Nafion膜に比べて低相対湿度条件(RH≦70%)で著しく低下した。これは、芳香族炭化水素系電解質膜中の酸素拡散性が、RH≦70%にて著しく低下するためである。したがって、芳香族炭化水素系電解質は、酸素のクロスオーバーによって引き起こされる膜劣化速度を低減する効果があり、PEFC電解質膜としては有利であるが、触媒層内イオノマーとして用いるためには、酸素拡散性と酸素溶解性のさらなる向上が必要であることがわかった。
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Research Products
(2 results)