2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21550188
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柴田 正実 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (40115316)
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Keywords | 電析 / 金属ガラス / パラジウム基 / ガラス転移温度 / 薄膜形成 |
Research Abstract |
金属ガラスのうち基礎的知見を得るための研究モデルとしてパラジウム系(Pd-Ni-P)金属ガラスについて研究を進めた。電流密度(析出電位)、金属塩濃度、撹拌、浴温など、種々の電析条件について調べた結果を以下に記す。電流密度の増大に伴い、皮膜中のパラジウム含量およびリン含量が増大し、ニッケル含量が減少することを明らかにした。また、浴中の塩化パラジウム濃度のみを増大させることにより電析膜中のパラジウム含量が増大しニッケル含量が減少すること、硫酸ニッケル濃度のみを増大させることによりニッケル含量が増大しパラジウム含量が減少すること、亜リン酸濃度のみを増大させることによりリン含量が増大しニッケル含量が減少することを見出した。また、エチレンジアミン浴濃度変化による電析膜組成の変化はほとんど見られなかった。以上の結果は、薄膜形成において、電析膜組成をコントロールする上で重要な知見である。 明らかにした析出条件を用いて、種々の組成を有する電析薄膜を形成した。X線回折装置を用いてこれらの結晶構造を調べた。その結果、リン組成がほぼ20%である皮膜では、アモルファス構造となっていることが分かった。さらに、パラジウムが35~60%、ニッケルが40~25%、リンが15~20%の皮膜組成では、DSC測定により、295℃付近にガラス転移温度が見出された。すなわち、これらの薄膜は金属ガラスであることを示唆している。 以上のように、電析法を用いて電気化学的諸条件を制御することにより、種々の組成を有する金属ガラス薄膜を容易に作製できることを明らかにしたことは、学術的にも、高耐食性表面処理等の視点からも大いに意義がある。
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