2010 Fiscal Year Annual Research Report
高強度繊維及び複合材料の軸方向圧縮破壊メカニズムの解明
Project/Area Number |
21550202
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩谷 正俊 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10196363)
|
Keywords | 炭素繊維 / 高強度繊維 / 圧縮強度 / 引張強度 / 小角X線散乱 / シンクロトロン放射光 |
Research Abstract |
高強度繊維は一般に引張強度に比べて圧縮強度が著しく低いために,複合材料設計においては圧縮強度が設計を律する因子となり,優れた引張強度が十分には活用されていないという問題がある。材料の強度特性を十分に活用することは,各種製品の軽量化につながり,省資源・省エネルギー化に貢献すると考えられる。本研究では,炭素繊維などの高強度繊維の圧縮強度が低い原因を解明して,引張強度及び圧縮強度のいずれもが高い繊維を製造することが可能であるかどうかを見極めると伴に,それが可能であればそれを実現し得る最適な繊維構造を検討することを目的としている。昨年度の研究では,放射光小角X線散乱を用いて,炭素繊維の圧縮過程におけるミクロボイドのサイズの変化を捉える予備実験を行った。本年度の研究では,圧縮及び引張過程における構造変化を比較検討することを目的として,放射光小角X線散乱を用いて,炭素繊維の引張過程におけるミクロボイドのサイズの変化を捉えることを試みた。炭素繊維は弾性率が極めて高く,引張破断伸度が2%程度以下と極めて小さいために,引張過程での構造変化を捉えることが難しい材料であるが,繊維に付加した引張応力の関数としてミクロボイドのサイズの変化を求めることに成功した。例えば,引張弾性率が235GPa,引張強度が4.7GPaの炭素繊維に3GPa程度の応力を付加すると,繊維軸方向のボイドサイズが約60%も増加する結果が得られた。繊維の引張過程における体積変化などに基づいて考察した結果,炭素網面の配向の増加に伴なってボイドが局所的に結合するような変化が生じたと推察した。これらの結果に基づいて,圧縮及び引張過程における構造変化を比較検討した。
|