2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 洋礼 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (30284483)
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Keywords | 結晶工学 / 解析・評価 / 結晶成長 / 金属物性 |
Research Abstract |
構造複雑系物質のひとつの典型である合金系準結晶とその近似晶の原子構造を電子密度分布レベルで解明し、非周期長距離秩序形成のメカニズムと構造安定性の起源についての知見を得ることを目的に研究を行なった。具体的には、Al-Ni-Ru正十角形準結晶と関連近似結晶のsolution-growth法による結晶育成条件の詳細を明らかにした。これにより、数ミリメートル程度の単結晶を再現性よく育成できることを確立した。この方法の適用により育成された結晶のうち、単斜晶Al_<13>(Ni,Ru)_4近似結晶の単結晶X線構造解析を行い、空間群がC2/mに属し,単位胞中に102個の原子を含む構造であることを明らかにした。さらに、すでにわれわれによって構造解析がなされた斜方晶Al_<13>(Ni,Ru)_4近似結晶との原子構造の比較により、両方の近似結晶でRuとNi原子には明確なケミカルオーダーは存在しないが、特定の原子サイトのみでNiとRu原子の占有率がほぼ半々になるという規則性があることを明らかにした。この特定の原子サイトは、一辺が0.47nmの5角形と菱形をモチーフとして近似結晶構造をあらわした場合に、菱形の短い体対角線の頂点位置に対応する。Al-Ni-Ru正十角形準結晶と近似結晶に共通する構造単位と考えられる5角形カラム状クラスターのNiとRu原子のケミカルオーダーが、共通する周期軸の周期1.6nmと0.8nmの違いに関連していることが示唆される結果が得られた。以上の近似結晶の結晶構造解析で得られた知見に基づき、Al-Ni-Ru正十角形準結晶の空間群P10_5mcに属す5次元結晶構造モデルを構築することができた。この構造モデルにより、電子顕微鏡のHAADF-STEM像で観測されている特徴的な遷移金属分布を解釈することができたことは、1.6nmという長周期構造を持つ正十角形準結晶の完全な構造解明に寄与する重要な結果である。
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Research Products
(6 results)