2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい層状超伝導体の創製(インターカレーションとイオン交換を駆使して)
Project/Area Number |
21560006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野地 尚 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50180740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 洋二 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70134038)
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Keywords | 鉄系超伝導体 / FeSe_<1-x>Te_x / 単結晶 / 比熱 / 超伝導ギャップ / 電子比熱係数 |
Research Abstract |
本年度は、近年発見された鉄系超伝導体の中でも最も単純な構造を持つFeSe_<1-x>Te_xの良質な単結晶を育成し、比熱測定により超伝導特性を調べた。単結晶育成を、二重真空封入したブリッジマン法で試みた結果、FeSe_<1-x>Te_x、(0.6≦x≦1)の良質単結晶育成に成功した。as-grownと真空アニールした単結晶の比熱を測定した結果、真空アニールによりx=0.6-0.9において、bulk超伝導に起因する超伝導転移温度:T_cでの明瞭な比熱のトビを観測した。これは、磁化測定の結果で、as-grown試料ではx=0.6でのみ超伝導を示唆する反磁性が観測され、真空アニールすると超伝導がx=0.6-0.9の範囲に拡大することと同じ結果となり、真空アニールによりbulk超伝導が誘起されることが、比熱測定によっても検証された。次に、真空アニールした単結晶の電子比熱を見積もり、超伝導凝集エネルギー、熱力学的臨界磁場、超伝導ギャップ:Δ_0を求めた結果、Δ_0/k_BT_cがx=0.7において最も大きく、弱結合であるBCS値より大きいことから、強結合的な超伝導が実現していることが分かった。また、超伝導転移する試料でのT=0Kにおける残留比熱係数:γ_0は、x=0.6-0.7ではゼロになるが、x=0.8-0.9では有限であることから、この領域では超伝導になっても常伝導電子が存在することが分かった。x=1であるFeTeは、反強磁性秩序を形成することにより超伝導にはならないことから、x=0.8-0.9では、超伝導と磁性が共存もしくは競合した状況にあると考えられる。つまり、x=0.8-0.9では相分離のような実空間での不均質や、実空間では均質であるが超伝導を担うバンドと磁性を担うバンドが別々に存在するような状態が起こっているのではないかと考えられる。
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Research Products
(31 results)