2009 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴による有機トランジスタのミクロ評価と電荷トラップ機構の解明
Project/Area Number |
21560008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丸本 一弘 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (50293668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹谷 純一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20371289)
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Keywords | 有機トランジスタ / 電子スピン共鳴 / ミクロ特性評価 / 電荷トラップ機構 / バイアスストレス / 界面処理 / 有機単結晶 / 有機薄膜 |
Research Abstract |
本研究では、電子スピン共鳴(ESR)法を有機低分子および有機高分子を用いた電界効果トランジスタ(FET)に適用し、結晶粒内やFET界面などにおける有機分子集合体のミクロ評価を進めながら、特に、これまでESR法により研究されてこなかった、バイアスストレスと電荷トラップとの関係を研究し、電荷トラップ機構を微視的な観点で解明する。今年度は、電荷トラップ状態の基本的な知見を得るために、結晶粒界などの非本質的な効果を排除できる有機単結晶FETを用いて、電荷トラップ時間(τ_<tr>)の界面処理依存性を研究した。有機材料はルブレンを用い、シリコン基板に貼り付け法でFETを作製し、有機界面の損傷を排除した。界面処理として自己組織化単分子膜(SAM)であるF-SAMおよびCH_3-SAMを用いた。比較として、高分子PMMAによる界面処理も行った。得られた電場誘起ESR(FI-ESR)信号は、キャリアの局所的な高移動度を反映して、運動による尖鋭化(Motional narrowing)により極めて狭い線幅となり、ローレンツ型線形を示した。また、FI-ESR信号の異方性を、密度汎関数法(DFT)による理論計算も併用して解析した所、バルクと同じ界面分子配向が同定され、その分子配向は界面処理に依存性しなかった。界面処理効果は線幅に現れ、SAM界面処理により線幅が更に尖鋭化され、これは局所的な移動度の向上を意味する。この時、マクロな観点から得られたFET移動度もSAM界面処理により~1から~8cm^2/Vsまで著しく向上し、線幅の減少と移動度の向上との間に明瞭な相関が観測された。さらに、FI-ESR信号の解析によりτ_<tr>を直接的に評価した。その結果、界面未処理やPMMAの場合と比較して、SAM界面処理によりτ_<tr>が~700から~60psまで劇的に減少することが明らかになった。従って、SAM界面処理は分子結晶性を変化させないにも関わらず、界面のトラップ準位を大幅に減らす効果を持つことが分かる。これにより、結晶性の高い有機トランジスタの移動度を更に向上させる新しい手法となることが示唆される。
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Research Products
(29 results)