2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子スピン共鳴による有機トランジスタのミクロ評価と電荷トラップ機構の解明
Project/Area Number |
21560008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丸本 一弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50293668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹谷 純一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20371289)
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Keywords | 有機トランジスタ / 電子スピン共鳴 / ミクロ特性評価 / 電荷トラップ機構 / バイアスストレス / 界面処理 / 有機単結晶 / 有機薄膜 |
Research Abstract |
本研究では、電子スピン共鳴(ESR)法を有機電界効果トランジスタ(OFET)に適用し、結晶粒内やFET界面などにおける有機分子集合体のミクロ評価を進めながら、特に、これまでESR法により研究されてこなかった、バイアスストレスと電荷トラップとの関係を研究し、電荷トラップ機構を微視的な観点で解明する。今年度は、電荷トラップ状態の知見を得るために、貼り付け法を用いて作製されたルブレン単結晶FETの電場誘起ESR(FI-ESR)信号のゲート電圧依存性を詳細に研究した。また、有機絶縁層界面でのトラップ現象の解析を進めるために、イオンゲルを用いた薄膜トランジスタの研究も行った。用いた有機半導体は立体規則性ポリヘキシルチオフェン(RR-P3HT)である。ルブレン単結晶FETの研究では、ESR線幅はゲート電圧に依存しない結果となった。これは、貼り付け法で作製されたルブレン単結晶FET界面には深いトラップ状態が存在しておらず、クリーンなFET界面が形成されていることを示す。この結果は、ルブレン単結晶上にパリレンを成膜して作製したFETの結果と対照的であり、パリレン絶縁膜を用いたルブレン単結晶FETでは、深いトラップ状態の存在によりESR線幅がゲート電圧に依存している。これらの結果はAppl,Phys.Expressに掲載された。また、イオンゲルを用いたRR-P3HT薄膜トランジスタの研究では、低電圧印加で明瞭なFI-ESR信号の観測に成功し、その信号のゲート電圧依存性や外部磁場方向依存性の解析を行った。その結果、高電荷密度状態では、電荷キャリアのスピン状態が常磁性から非磁性に変化し、非磁性電荷伝導が実現していること、更に、電荷キャリアスピン間の2次元的な磁気的相互作用が実現していることが立証された。なお、電荷トラップ状態の研究に関連して、有機薄膜太陽電池のESR研究に成功し、素子中の電荷形成を明らかにした。この結果はAdvanced Energy Materialsに掲載され、JSTプレスリリースや記者会見、日刊工業、日経産業、化学工業日報の新聞等で報道された。
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Research Products
(45 results)