Research Abstract |
本研究では,四極子-歪結合定数g_Γの値を実験的に決定することを目的として,雰囲気が制御された等温熱処理によって原子空孔濃度が熱平衡濃度に到達した状況をつくり,これを急冷凍結する.このような熱処理の温度としては,1380,1330,1280,1240,1200,1160,1130℃を計画している. 今年度は,このような高温・長時間熱処理を実施するために,遊休設備として分解・保管されていた熱処理炉の組立てと立上げ実験を行った.炉心管としては,1200℃までの熱処理温度に用いる高純度石英管と,それ以上の高温熱処理に用いるシリコンカーバイド炉心管の二種類が準備されているが,今回の立上げ実験は高純度石英管を用いて行った.立上げ実験の結果,炉の運転条件として,1100℃,6時間(密閉窒素雰囲気)が難なく実現できることが実証できた.炉の昇温・降温についても,炉の設計・制作当時の制御性を再現することができた.この条件における熱処理温度の安定性についても±10℃が実現できた.石英管の耐熱性に関する運転実績から考えて,この立上げ実験の成功は,1200℃,6時間の雰囲気制御熱処理が可能であることを実証したと言える.密閉状態についても,窒素ガス99.9%以上を実現し,外部汚染の侵入の問題を回避するために十分な密閉性が確保されていることがわかった. 商業用シリコンウェーハを用いての汚染チェック実験も行った.目視検査の範囲では,金属汚染などによって引き起こされるウェーハ表面のピット欠陥されなかった. さらに高い熱処理温度(1380,1330,1280,1240℃)に対する立上げ実験は,22年度の初めに実施する予定である.最高温度(1380℃)における汚染チェック実験(目視とDLTS法を採用する予定)も合わせて実施する.
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