Research Abstract |
(1)急冷速度について 当初の実験計画では,試料としては,4mm□×6mm長のブロック状結晶を用い,ヒータ線が石英(またはSiC)炉心管を取巻く形式の通常の横型電気炉熱による処理よって高温での平衡原子空孔を実現させ,これを急冷凍結しようとした.しかし結果的には,求められた原子空孔濃度の値は予測された一定の傾向を示さず(バラつきが大きくなり),熱処理条件に根本的な問題があることが判明した.最大の原因は,超音波測定にとっては有利であるが,急冷にとっては不利な形状であるブロック状試料を用いた事と,密閉型であるという点では雰囲気制御が容易であるが,大型になるため装置全体の熱容量が大きい(冷えにくい)ために,必要な急冷速度が得られていなかった事である.こ不具合を見出すことができたのは一つの成果であり,次年度研究に向けての改善方針(下記(3))が見出された. (2)クリーンな熱処理雰囲気の実現について: 高温熱処理中に,熱処理雰囲気(アルゴンガス)を媒介として汚染原子が試料中に侵入し,原子空孔の状態を乱している可能性が排除できないのが現状の実験条件である.問題にする試料中の原子空孔濃度はおおよそ10^14個/cm^3程度と推定されるが,高温熱処理ではこれと同程度の濃度の重金属汚があり,原子空孔の荷電状態を変えている可能性がる.また,雰囲気中に混入した酸素のために試料表面で酸化が進行し,これに伴い試料中に放出された格子間酸素が原子空孔を消滅(相殺)させている可能性もある.今回の実験では,熱処理炉が設置されているのは半導体用プロセス用のクリーンルームではなく,大学内のごく普通の実験室である.更に,ガス配管類も高純度ガスの使用を前提としたものではないため,熱処理雰囲気の高純度化の点で大きな問題がある.このようなクリーンな熱処理雰囲気が実現されていないことを示唆する実験結果が現実に幾つか得られた. (3)解決策:上記の二つの本質的問題の解決策として,今後はウェーハメーカにてRTP処理を施すことによって熱平濃度結原子空孔を含むシリコンウェーバ(ブロックではなく)を作成し,これを試料として用いる.
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