2009 Fiscal Year Annual Research Report
熱電変換材料候補であるタリウム化合物が示すナノ空間変調構造の分光学的検証
Project/Area Number |
21560019
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三村 功次郎 Osaka Prefecture University, 工学研究科, 准教授 (40305652)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇田 和樹 千葉工業大学, 工学部, 教授 (80201151)
田口 幸広 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (80236405)
|
Keywords | 熱電変換材料 / ナノ空間変調構造 / インコメンシュレート相 / 軟X線発光分光 / 軟X線吸収分光 / 角度分解光電子分光 / 蛍光X線ホログラィー |
Research Abstract |
本研究の目的は、熱電変換材料候補であるTlInSe_2が極めて高いゼーベック係数(約10^6μV/K)を示す要因とされるインコメンシュレート(IC)相(ナノ空間変調構造)を、角度分解光電子分光(ARPES),軟X線発光分光(XES),軟X線吸収分光(XAS)より得た電子構造の全貌から検証することにある。この目標を達成するため、本年度は以下のことを行った。 XES, XASのワイドレンジでの温度変化の観測を可能とするために温度コントローラ(LakeShore社製:331S)を導入すると共に、温度可変マニピュレータの設計を行った。また、XES, XASのテスト測定を行ったが、Tl4p-6sの発光効率が非常に弱く、予想以上に発光強度を稼ぐことに苦慮している。これを克服することが次年度以降の大きな課題である。 XES, XASと比較してARPESでは大きな成果を挙げている。TlGaTe_2および2元の基本物質であるTlSeに対して得たARPESスペクトル中にはバルクのエネルギーバンドでは説明できない特殊な分散構造が発見された。ARPESの励起エネルギー依存性および清浄試料表面の状態から、現在のところ、この分散構造は表面の伝導バンドの構造を結合状態密度として観測したものであると考えている。この構造はグラフェンおよびBiSe系で観測されているディラックコーンに相当するもので、本研究の目的とは多少逸脱するが、基礎的な面からみて非常に興味深い成果であると考えて良く、今後も研究を推進していく予定である。 また新たに、蛍光X線ホログラフィー(XFH)によりTlInSe_2の室温における実空間での原子位置を詳細に調べ、IC相との相関関係を議論した。ホログラム像の解析から得られた原子像は、TlInSe_2のIC相においてTl原子が空間的に揺らいでいることに密接に関連しているものと示唆しており、今後、XFHの温度依存性を観測することでIC相に関する理解を深めたいと考えている。
|