2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱電変換材料候補であるタリウム化合物が示すナノ空間変調構造の分光学的検証
Project/Area Number |
21560019
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
三村 功次郎 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (40305652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇田 和樹 千葉工業大学, 工学部, 教授 (80201151)
田口 幸広 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (80236405)
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Keywords | 熱電変換材料 / ナノ空間変調構造 / インコメンシュレート相 / 軟X線発光分光 / 軟X線吸収分光 / 角度分解光電子分光 / 蛍光X線ホログラフィー |
Research Abstract |
本研究の目的は、熱電変換材料候補であるTlInSe_2が極めて高いゼーベック係数(約10^6μV/K)を示す要因とされるインコメンシュレート(IC)相(ナノ空間変調構造)を、角度分解光電子分光(ARPES),軟X線発光分光(XES),軟X線吸収分光(XAS)より得た電子構造の全貌から検証することにある。しかしながら、XES,XAS測定についてはTl4p-6sの発光効率が非常に弱く、予想以上に発光強度を稼ぐことに苦慮したため、ARPESおよび新たに蛍光X線ホログラフィー(XFH)に測定の重点をシフトして本課題の目標達成を図った。 TlGaTe_2の価電子帯頂上近傍のARPESスペクトルは、光電子の遷移行列要素の問題により十分なスペクトル強度が得られず、TlInSe_2のようなIC相の検証には至らなかった。今後、より広いエネルギー依存性を観測することで、この問題を解決する必要がある。しかし、TlGaTe_2および2元の基本物質であるTlSeに対して得たARPESスペクトル中にはバルクのエネルギーバンドでは説明できない特殊な分散構造が発見され、本来の熱電材料としての研究展開に加えて大きな成果が得られた。この分散構造は表面の伝導バンドの構造を結合状態密度として観測したものであり、ディラックコーンに相当するもので、本研究の進展はトポロジカル絶縁体の理解に深く関わるものである。 さらにXFHにより得られたTlInSe_2の室温における実空間での原子位置からIC相との相関関係を議論した。ホログラム像の解析によれば、Tl原子は結晶中で非常に大きく揺らいでおり、Tl原子の周りのInも協調して揺らいでいることを示唆している。この揺らぎは、フォノンバンド計算から推測される原子振動モードに良く対応している。この計算によれば、振動に寄与するバンドは相転移に伴い分裂することが示唆されている。実際にTlInSe_2のARPESでは価電子帯頂上のエネルギーバンドがIC相において分裂しており、相転移に伴う格子振動と電子構造の相関関係が明らかとなった。
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Research Products
(57 results)