2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560024
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大井 修一 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, 主任研究員 (10354292)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / アンチドット格子 / 磁束量子 / マッチング効果 / 磁束線フロー |
Research Abstract |
高温超伝導体の磁場中での特性を決めるのは、超伝導体中に生成された渦糸(量子化磁束)である。これまで、高品質単結晶中での物質固有の特性に注目した研究がなされ、従来超伝導体では見られなかった多彩な渦糸状態・渦糸相図が明らかにされてきた。一方我々は、ここ数年来、FIBなどを用い微細な構造を人工的に制御して導入し、渦糸物質に及ぼす影響を調べてきた。これまでの研究における微細加工プロセスの改善によって、渦糸物質の相転移を観測できるほど高品質で詳細な物性測定に適う試料ができるようになってきたが、引き続きアンチドット格子を持つ高温超伝導体中の渦糸状態について未知の知見を得るために、更なる試料作製・測定方法の改善を行った。昨年度までに見出した、高温超伝導体における分数マッチング効果、ピン止めされた渦糸固体の融解相転移については、アンチドット格子の対称性やアンチドット径・密度による依存性を明らかにした。融解転移は明瞭な抵抗のジャンプとして観察され、条件によっては一次相転移の様相を示す。この一次相転移は、アンチドットをランダムに配置した場合には観察されず、明瞭な分数マッチング効果も現れないことから、ピン止め格子の対称性が重要な役割を果たしていることを示している。渦糸格子自体は、アブリコソフ三角格子として知られるように、通常、正三角格子を組む傾向があるため、マッチング磁場においてアンチドット正三角格子によるピン止めは最も強い。一方、アンチドット正方格子の場合、渦糸系は正三角格子を組むことでエネルギーを下げ、ピン止め格子から外れる浮遊固体相が現れる可能性が理論的に指摘されていた。実際、ピン止め力が弱いと考えられる正方格子試料では、浮遊固体相の存在を示す2段階の相転移が観察できた。また、結晶のc軸方向の電気伝導を調べることで、渦糸の超伝導面間相関についての知見を得るべく、アンチドット格子を導入した固有ジョセフソン接合試料を作製し、整数マッチシグ効果の観測に成功した。今後、引き続き試料の質を向上させ、渦糸系の相図や相転移を議論可能な試料の作製に取り組む。
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