2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560024
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大井 修一 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 主任研究員 (10354292)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / アンチドット格子 / 磁束量子 / マッチング効果 / 磁束線フロー / 固有ジョセフソン接合 |
Research Abstract |
第2種超伝導体の磁場中での特性を決めるのは、超伝導体中に生成された渦糸(量子化磁束)である。なかでも、高温超伝導体では、高い超伝導転移温度や大きな異方性、短い超伝導コヒーレンス長といった要因により、従来超伝導体では見られなかった多彩な渦糸状態・渦糸相図が明らかにされてきた。これらの研究の進展には、渦糸のピン止め中心となる欠陥が極力少ない高品質単結晶が作られるようになったことが大きく寄与している。一方、本研究では、高品質試料に逆にFIBなどを用い微細な構造を人工的に制御して導入し(人工ピン止め)、渦糸物質に及ぼす影響を調べた。表面保護層の最適化など微細加工プロセスの改善によって、渦糸物質の相転移を観測できるほど高品質で詳細な物性測定に適う試料ができるようになった。本年度は、アンチドット格子やランダムに配置された人工ピン止めを持つ高温超伝導体中の渦糸状態、特に渦糸の超伝導面間相関についての知見を得るべく、更なる試料作製・測定方法の工夫や改善を行った。試料作製に関しては、プロセス数を極力減らすため、劈開とFIB加工のみでの、アンチドット格子を導入した固有ジョセフソン接合試料作製を実現した。昨年度までに面内渦糸フロー抵抗測定により見出した高温超伝導体における分数マッチング効果、ピン止めされた渦糸固体の融解相転移について、c軸電気抵抗測定からも同様に観察することに成功した。さらに、c軸抵抗測定ではこれらの現象の見え方に大きな電流依存性があることが分かり、適当な引加電流では渦糸系の相転移による巨大かつ急峻な抵抗転移を見出した。また、面内抵抗測定ではアクセスできなかったピン止めされた渦糸固体相内部の様子がc軸ジョセフソン臨界電流測定により明らかになった。
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