2010 Fiscal Year Annual Research Report
光励起-誘電緩和測定法の開発:光活性種の励起・脱励起過程の選択定量分析
Project/Area Number |
21560037
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
石井 真史 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームセンター, 主任研究員 (90281667)
|
Keywords | 光物性 / 半導体物性 / 誘電体物性 / 誘電緩和 / 希土類添加 / 電荷移動 / 発光デバイス |
Research Abstract |
光照射下で誘電緩和を測定する「光励起誘電緩和」法を新たに提案して、希土類を添加した半導体に適用し、電荷の注入→欠陥準位への捕獲→希土類へのエネルギー伝搬・励起→発光の一連の電荷伝搬プロセスを追跡し定量分析することを試みている。このプロセスは従来間接的な証拠から信じられていたものであり、直接証拠はまだない。 本年度(22年度)は、酸化サマリウムSm203を添加した酸化チタンTiO2に対して、まず従来の誘電緩和(20~1MHz)測定を行った。試料の熱活性化条件を変化させ発光強度を調整すると、発光強度に対応して電荷捕獲特性が著しく変化する準位を見出した。特に捕獲密度が発光強度と対応することから、この準位を介して希土類の励起が起こることが予想される。これは上述の電荷伝搬プロセスの第一ステップに相当する。このステップの緩和周波数はほぼ15Hzであることが分かった。 更に、紫外光365nmの準単色光をパルス照射してその誘電応答を見たところ、測定周波数1kHzを境に応答特性が変わることが確認された。これは光照射に敏感な準位がこの周波数に緩和を持つことを示唆している。おそらく、発光に寄与する捕獲準位における電子正孔対の再結合を反映した緩和特性であると思われる。これは上述の電荷伝搬プロセスの第二ステップに相当する。 このように本研究により、これまで直接証拠が無かった電荷伝搬プロセスを、順を追って定量的に分析できることが分かってきた。本手法の原理検証と有用性の実証が順調に進んでいると言える。今年度は更に、酸化エルビウムEr203を添加したGaAsを外部との連携により作成し、新たな試料としての採用の可能性について検討を始めた。 来年度(23年度)では、発光効率の向上を視野に入れて、カギとなる電荷伝搬に関与する準位のより詳細な解析、更に電荷伝搬の積極的な制御も考えている。
|