2009 Fiscal Year Annual Research Report
カバーガラスの部分挿入による2波長レーザー発振とそのテラヘルツ波発生への応用
Project/Area Number |
21560044
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
和田 健司 Osaka Prefecture University, 大学院・工学研究科, 准教授 (40240543)
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Keywords | 高性能レーザー / テラヘルツ / 半導体レーザー / 光伝導アンテナ |
Research Abstract |
研究初年度の21年度は,端面を無反射コーティングした半導体レーザーを用いて,外部鏡を配置し,直線状の外部共振器半導体レーザーを構成することから始めた.厚さの異なるカバーガラスを数種類(80~570μm)用意し,共振器内ビームに対して各カバーガラスを部分挿入することにより2波長発振の発生を試みた.その結果,挿入したカバーガラスを光学エタロンと見なした場合,それぞれの光学エタロンのフリースペクトラムレンジの約6倍に相当する周波数差(約1~7THz)をもつ2波長発振が比較的容易に生じることを確認した.また,光伝導アンテナに照射してテラヘルツ波を発生させるために十分な出力強度(10~50mW程度)がこのレーザーより得られた.ただし,半導体レーザーの利得帯域がやや狭いことを反映して,広い利得帯域幅をもつ固体レーザー(LiSrAlF_6)で同様の実験を行った場合に比較すると,2波長発振時にモード競合的な時間的不安定性が生じやすいことを確認した.そこで,この不安定性を抑制すべく,共振器の短共振器化や,励起電流値の最適化,半導体レーザーの温度制御をそれぞれ試みた.その結果,共振器長約5cm,励起電流値は規格内でできるだけ高く設定した上で,温度制御を施すことにより,2波長発振出力の強度変動幅をもとの30%程度から1%以内まで低下させ,2波長発振の出力安定化を実現した.このように,短共振器化は縦モード間隔を広げ,モード競合が発生しにくい条件を与えるため,出力強度の安定化には効果的に寄与した.しかし一方で,カバーガラスの挿入角度を調整して,発生するテラヘルツ波の周波数掃引を図る際には,短共振器化は不利な条件として作用することも確認した.出力強度の安定化とテラヘルツ波の周波数掃引が両立する共振器構成については,継続して検討する予定である.
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