Research Abstract |
研究初年度に,カバーガラスを光学エタロンとして内部に含む直線状の外部共振器820nm帯半導体レーザーを構成し,2波長同時発振を達成した.カバーガラスエタロンは,共振器内ビームに部分的に挿入することにより,フリースペクトラルレンジの6倍の周波数差をもつ2波長発振が得られた.この出力に対して,時間的安定性を保つために,半導体レーザーを温度制御するとともに防振対策を施した.これにより,2波長出力に対して,数10分間の時間的安定性を実現することができたが,長時間動作では,モード競合的な不安定発振に至ることが確認された. そこで,研究2年目の平成22年度は,共振器内にカバーガラスエタロンを1枚追加して,さらなる時間安定性の向上をめざすことから始めた.この際挿入したカバーガラスエタロンは共振器内ビームに対して完全挿入することにより,半導体レーザーの利得ピークを低減させ,利得スペクトルが平滑化するように図った.この結果,時間的安定性は向上し,発振開始後,3時間以上経過した場合にも,安定した2波長同時発振を保つことができた.次に,この2波長発振出力をガリウムヒ素光伝導アンテナのギャップ間に集光し,2波長発振の波長差(周波数差)に相当するテラヘルツ波を発生させた.焦電型赤外センサを用いて測定したところ,光伝導アンテナへのバイアス電圧10V,2波長発振の平均出力25mW,2波長発振の周波数差1.033THzの条件において,60nW程度の平均強度をもつテラヘルツ波が発生することを確認した.また,部分挿入したカバーガラスエタロンを共振器内ビームに対して,傾けて配置することにより,例えば,1.97THz~2.26THzの区間で2波長発振の周波数差が可変となることも確認した.テラヘルツ波出力強度の向上と時間領域テラヘルツ分光システムの構築については次年度の課題とする.
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