Research Abstract |
研究最終年度の平成23年度は,一対の低温成長GaAs光伝導アンテナを用いて,テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)の光学システムを構築した.光源には外部共振器半導体レーザーを構成して用いた.2枚のカバーガラスエタロンを共振器内に挿入し,一方は2波長発振の周波数差制御用として,もう一方は,出力の時間安定性保持用として利用した.厚さの異なるカバーガラス7枚(80,110,150,210,295,400,560μm)を用意し,1枚ずつ共振器内に部分挿入し,さらに挿入角を掃引(0~45度)することにより,2波長発振の周波数差が0.76~7.5THzの帯域を隙間なく覆うことができることを確認した.また,カバーガラス全挿入時の挿入角掃引(0~60度)も利用すると,離散的ながら0.15~0.76THzの帯域も埋められ,あわせてテラヘルツ域(0.1~10THz)の大部分を覆うことができることを確認した.この光源出力を構築したTHz-TDSシステムに入力し,0.15~1.15THzのテラヘルツ波を発生することに成功した.ただし,広帯域掃引にはカバーガラスの交換と光学調整が必要であることが難点として残された.また,理論式の導出と数値計算によって,THz-TDSにおけるフェムト秒モード同期パルスと2波長定常光をそれぞれ入力光とした場合の相違について検討した.その結果,最大周波数差と平均強度が等しければ,両者は等しい強度のテラヘルツ波を発生することを見積もった.これより,光伝導アンテナを用いるTHz-TDSでは,高速掃引可能な2波長レーザーが入力光源として有効であることがわかった.また,THz-TDSで観測される波形は,入力光の種類によらず相互相関波形であり,テラヘルツ波や入力レーザー光の時間波形を再生するには,デコンボリューションが必要であることもわかった.
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