2009 Fiscal Year Annual Research Report
古典-量子マルチスケール輸送現象の可視化統合シミュレーション
Project/Area Number |
21560064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石尾 広武 Ritsumeikan University, 総合理工学研究機構, 研究員 (40271035)
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Keywords | シミュレーション工学 / 計算物理 / 可視化 |
Research Abstract |
量子系のカオス問題は、従来多くの研究が孤立系に対して行われてきた。本研究では、開放系の非平衡定常状態下における量子輸送現象とその背後にあるカオスとの関係を数値シミュレーションにより可視化する。本年度は、研究の第一段階として、次の2つについて取り組んだ。1、古典系がカオスを示す典型的なモデルとして、2つの開口をもつ2次元スタジアム型ビリヤードを採用し、低エネルギー領域から高エネルギー領域までの各エネルギーに対応する波動関数を数値計算で解くことができた。そこでは、一方の開口から入射した波はビリヤード内の2次元自由空間を伝播し、ディリクレ型境界で複雑な散乱を起こす。波動方程式としてヘルムホルツ方程式をこの様な境界条件の下で数値的に解く従来の方法は、各エネルギー領域に対して意外にも堅牢であることが分かった。こうして得られた波動関数が、古典と量子の境界領域に特徴的なメゾスコピックな振舞いを示すことが明らかになった。現在は、これらの波動関数を解くためのより信頼性の高い数値計算手法の開発を模索している。2、開放系の非平衡定常状態に至る緩和過程でのダイナミックスを調べるために、分子動力学シミュレーションを用いた応用研究を行った。溶媒としての水の中にイオンなどの溶質を入れ、水分子の並進拡散や回転緩和などの定量的解析を行った。その結果、溶質の電荷やシミュレーション時間の関数として、それらの中に特徴的なゆらぎの効果を見出す事が出来た。この様な多自由度系は、カオスを示すのに十分複雑な相互作用をもつと考えられる。しかし、現実の実験に近いより大きな系を扱うことは重要であるが、そのためには、更に大規模な数値計算が必要である。
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Research Products
(1 results)