2011 Fiscal Year Annual Research Report
古典-量子マルチスケール輸送現象の可視化統合シミュレーション
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21560064
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
石尾 広武 福山市立大学, 都市経営学部, 教授 (40271035)
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Keywords | シミュレーション工学 / 計算物理 / 可視化 |
Research Abstract |
量子系のカオス問題は、従来多くの研究が孤立系に対して行われてきた。本研究では、開放系の非平衡定常状態下における量子輸送現象とその背後にあるカオスとの関係を数値シミュレーションにより可視化する。本年度は、研究の第二段階の後半として、前年度に引き続き、カオス的な散乱が起きる開放系ビリヤードにおいて、位相干渉効果に起因する量子輸送係数のゆらぎと、カオス系特有の多階層(マルチスケール)なダイナミクスとの関係を詳細に調べた。前年度までに得られたプログラムを大きく変更することなく、古典領域とみなされる程の高いエネルギー領域に至るまで、計算する各エネルギーサンプルの値をより細かくすることで、ほぼ連続的なエネルギー変化とみなせるような数値シミュレーションが可能になった。 こうして積み上げた、広範なエネルギー範囲を含む膨大なデータを詳しく解析して、より高エネルギーになればなるほど、量子輸送係数の微細なゆらぎと波動関数の局在現象(スカー)などの中にフラクタルな構造が現れ、より深い階層構造が形成されていく様子を直接観察することが、次に重要になってくる。そのためには、多くの複雑な情報をより分かり易く提示するための技術が必要になる。本年度は、その準備研究として、特に、人間工学的視点を取り入れた、効果的な表示技術に関する基礎実験と評価を行うことができた。その中で、人の視覚認識と情報処理に関する、本質的機能の一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算方法を大きく変更することなく、より高いエネルギー領域の波動関数の計算にも耐え得るようになり、当初に計画した研究の第二段階後半の目標である古典的な領域のシミュレーションが可能になってきたから。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き、より高いエネルギー領域の波動関数の計算及び解析を続けると共に、今後は、計算で得られる複雑なマルチスケール輸送現象を、一般の人にも分かり易くシミュレーションするための可視化技法の追及に重点を移していく。
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Research Products
(3 results)