Research Abstract |
まず,現在の経済情勢において証券化の対象となっているリスク要因にできるだけ広範に対応するために,対象要因の状態の時間変動が不連続となるケースも許容できるモデル,特に本研究ではLevy過程が駆動する確率微分方程式,およびその自然な拡張(Cox過程などの二重確率要因が含まれる場合)の解として表現できるモデルを想定することにより,多種多様なリスク現象に対応し得ることを確認した。この場合,問題となるのは,そのように構成した複雑なモデルを定量的に解析する方針を明確に構築することであり,本研究ではそのために,確率測度変換の基本指針の構築と,それに基づく効率的な数値シミュレーションの構築が可能であることを示した。 リスク証券化を念頭に置いた場合,必要不可欠となるのが,そのリスクを証券化した場合の均衡価格の妥当な値を導出する基本スキームであり,そのために上記の確率測度変換により均衡を実現し得る確率測度構成する基本指針を示した。特に,完備性が保証されないケースを想定して,付帯条件を付加して合理的に測度を構成する手法についていくつかの提案を行なった。さらに,同じ型の確率測度変換により,効率的なシミュレーションスキームの構成が可能であることを示し,いくつかの具体例について実際に数値実験を行なってその有効性を確認した。なお,今回構築したスキームの構成法は,これまでの研究代表者の研究で議論されてきた手法を特別の場合として含むものであり,この点で構成法の拡張が達成できたと考えられる。特に,リスク解析においては微小な生起確率を精度よく推定することが重要となるので,このような効率的シミュレーションスキームは広い応用性が期待できる。また,構成したモデルの特性が,強い非線形性を有する場合についても,対応し得る改良法の提案を行なった。 次のステップとして必要となると考えられるのが,リスクを証券化した商品の市場での価格および売買状況の時間変動の統計的性質を記述する確率モデルの構築であるが,上述のようにかなり広範なモデル化とそれに対する解析の基本方針が確率できたので,この点については,本年の成果を踏まえて,研究2年目にあたる次に進めていく予定である。
|