2011 Fiscal Year Annual Research Report
リスク証券化の社会的影響分析と工学的見地からの最適管理方策
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21560066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 泰明 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90217068)
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Keywords | リスク解析 / リスク証券化 / 確率モデル / 高速シミュレーション / 最適管理方策 / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
平成23年度は,主に次の2点について研究を進め,当初目標に到達し得る成果を得ることができた. 1.Levy過程が駆動する確率システムに対する,確率測度変換法に基づく高速シミュレーションスキームについて,前年度に構築したスキーム構成の基本指針をさらに改訂し,Levy-Ito分解の表式に忠実に立脚する形で測度変換法を構築した.この改訂は前年度の結果を特別の場合として含むものであり,最適なサンプリング測度構成を考える上で,より便利となっている.さらに,この改訂指針に基づく具体的なスキームがうまく稼働することを,簡単な確率システムを例に確認することができた. 2.リスク管理の最適な方策を理論的に明らかとすることを目的として,前年度は確率制御理論を適用することにより,社会インフラのメンテナンスプログラムの最適化問題を解析する基本指針を与えたが,今年度はこれをさらに推し進め,数値解析スキームの構築とそれによる定量的解析を実施し,本提案アプローチの有効性を具体的に確認することができた.また,リスク事象を記述する確率モデルに,一般によく用いられる連続Gauss型雑音と,Poisson型雑音の両者が共存するようなケースでも,確率制御理論による最適化解析がうまく機能することを明らかとすることができた.このことにより,多様なリスクモデルを対象とする解析上の道が開けたと考えられる. 3.リスク証券化を考える上で,近年の経済情勢を鑑みると「格付け」の影響を取り入れることが重要性を増してきている.このため,ヨーロッパの経済危機におけるデータを収集し,リスク事象の発生確率と格付けの関係の定式化,格付けの低下と証券価格の低下の関係の定式化,について試行的考察を与えた. なお,項目2の後半部分と項目3の研究成果の公表については平成24年度冒頭で実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リスク生起確率を効率的に数値評価するためのシミュレーションスキームについては,一般のLevy過程に対して適用可能なスキームの基本原理について,概ね目標としていたレベルまで達成できたことと,確率制御理論の適用によるリスク管理方策の最適化について,拡張したモデルに立脚した定式化と数値解析スキームも構築できたことから,進展はおおむね順調であると判断できると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究課題の最終年度であるため,研究の総括に重点を置いて研究を推進すると共に,実用的問題への具体的な応用に関する考察を主に行うことを目標とする.なお,証券化されたリスクの市場価格のモデル化については,本課題計画当初は理論面からの考察を中心に先験的確率モデルを与えるというアプローチを想定していたが,近年のギリシャ金融危機などによって主要国家の国債のデフォルトなどが表面化してきたことから,これらの影響を考慮したモデル化について平成23年度に与えた試行的考察をベースに,それを継続する形でさらに検討を進めることとする.
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