2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560073
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
栗原 一嘉 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (20270704)
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Keywords | 表面プラズモン / 超集束 / スーパーフォーカシング / ナノフォーカシング / プラズモニクス / 変数分離 / 金属テーパー構造 / 金属導波路 |
Research Abstract |
レンズやミラー等を用いた光学系では、回折限界を超えて光を集束することは困難であるが、表面プラズモンと呼ばれる金属表面を伝搬する光を用いれば可能となる。本研究は今年度が最終年度であるので、金属テーパー構造による超集束に関して、理論と実験の融合を目指した研究を推進した。 テラヘルツ波(THz波)とも呼ばれる遠赤外領域の分光技術を発展させる上で重要な課題の一つに、回折限界よりも小さな試料を容易に測定することが挙げられる。振動数1THzの電磁波は波長が0.3mmであるので、半波長0.15mmよりも微細な試料は、回折限界以下なので分光測定が難しくなる。しかし、表面プラズモンによる超集束を使えば、回折限界以下の寸法を持つ試料も測定が容易になる。表面プラズモン超集束の基本的な理論から、直線偏光の遠赤外線を超集束するには、金属V溝テーパー構造を使えばよいことが推察される。実際、福井大学の遠赤外領域開発研究センターに依頼して、そのような実験をやってもらった所、波長に対して100分の1の間隙を遠赤外線が通過する超集束を観測することができた。今年度は、この実験事実を説明するために、金属V溝テーパー構造における超集束の理論を、光領域だけでなく、遠赤外領域でも説明できる理論に拡張した。遠赤外領域における困難の一つは、金属の比誘電率が複素数であり、その絶対値は10,000以上と大きく、また多くの場合、複素数の虚部が実部よりも大きくなることである。このことが原因となって、遠赤外領域の超集束は、光領域の超集束といくつかの点で質的に異なった振る舞いをする。その中で、今年度、理論的に説明できたことは、遠赤外領域において、(1)超集束の波数変化を求めたこと、(2)超集束が起こる過程の電気力線表示を描くことに成功したことである。遠赤外領域の超集束は実験的に有用であるため、理論面での更なる発展が今後も期待される。
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