Research Abstract |
基材に展伸マグネシウム(Mg)合金AZ80を用い,基礎的な破壊挙動を把握するために大気中および純水中における疲労試験を実施した.その結果,大気中における疲労挙動では,Al-Mn系の金属間化合物もしくは母材のすべり変形によりき裂が発生し,疲労限度は120MPaとなった.これに対し,穏やかな腐食環境である純水中においても,疲労試験では多数の腐食ピットが認められた.これらの腐食ピットがき裂発生起点となるため,純水中では大気中における疲労限度より低い応力レベルでも疲労破壊が生じる典型的な腐食疲労挙動を示した.次に,厚さ15μmのDLC皮膜のみを被覆したMg合金の疲労試験を実施し,大気中では有限寿命域での疲労寿命には差がないが,疲労限度が著しく向上することを明らかにした.しかし,純水中における試験では,腐食疲労強度が向上するものの,早期破断する場合もあり,疲労強度に大きなばらつきが認められた.皮膜の微視的観察より,膜中に基材へ到達するような欠陥の存在が確認され,疲労強度のばらつきの原因であることを確認した.以上のデータを基材のMg合金,および単層のDLC皮膜を被覆したMg合金の基礎的疲労挙動とし,複合皮膜の製膜を行った.中間層のWC-12CoをHVOFにて基材に溶射し,その後DLC皮膜を製膜した.DLC皮膜は膜厚3および15μm,WC-12Co皮膜は15,50および80μmとして組み合わせ,DLC皮膜とWC-12Co皮膜がそれぞれ3μmと15μmのDO3W15材,15μmと50μmのD15W50材および15μmと80μmのD15W80材の3種類を用意した.断面様相等を確認し,WC-12Co層とDLC層で,複合皮膜が形成されていることを確認した.また,DLC単層の場合の応力状態をFEMにより算出し,基材および皮膜の応力状態が,膜弾性係数の影響を強く受けることを明らかにした.
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