Research Abstract |
基材に展伸マグネシウム(Mg)合金AZ80を用い,DLC皮膜による基礎的な疲労強度向上因子を把握するために,大気中および純水中においてDLC皮膜のみを被覆した試料を用いて疲労試験を実施した.なおDLC皮膜を製膜する際,製膜欠陥に結びつく異常放電(アーキング)が発生しにくいように電源を制御し,かつ単層3μmと1μm×3層の多層材を用いて比較した.その結果,大気中における疲労強度がアーキング低減制御によって著しく向上した.また純水中では,アーキング低減制御と多層化を組み合わせることで腐食疲労強度の向上に成功した,Mg合金の耐食性DLC皮膜として,アーキング低減制御と多層化が重要な因子であることを指摘したことは工学的に重要な意義がある.また複合皮膜材については,前年度にMg合金と溶射皮膜との線膨張係数の相違から,DLC製膜時に中間層割れが生じることを指摘した.そこで今年度は,基材を線膨張係数が若干小さいアルミニウム(Al)合金A5083を基材とし,WC-12Coの溶射中間層とDLC皮膜を組み合わせた複合皮膜材を作成し,疲労試験を実施した.その結果,基材の線膨張係数を下げた場合でも中間層に割れが生じ,DLC製膜温度を現状の150℃よりも低温とすることを今後の検討課題とした.疲労試験については,WC-12Co溶射皮膜の単層材では,皮膜厚さが厚くなるほど,皮膜による基材の変形拘束や皮膜の応力負担によって疲労強度が大きく向上することが判明した.また,DLC皮膜と複合化することで,中間層厚さが70μmの場合に単層皮膜材よりもさらに強度が向上する.しかし,中間層が70μmよりも薄い,あるいは厚い場合に,複合化しても強度向上できないことを明らかにした.このように,複合皮膜によって強度向上を達成するには,中間層として最適厚さがあることを指摘したことは,工学的に重要な知見である.
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