Research Abstract |
本年度の目標:(1)基板は前年度同様の被覆超硬合金WC・Coの他に,フロートガラス(非強化ガラス,強化ガラス)を追加する.(2)基板試験片についてTiN被覆試験片と同様の疲労試験を行う.(3)TiN被覆WC・Coについて,より広範囲の最六荷重条件(P_<max>)の疲労試験を行う,(3)TiN被覆WC・Co基板,TiN被覆ガラスに関して,疲労試験中の薄膜および基板のき裂発生挙動を詳細に観察する.以上は,前年度と同様の実験条件,実験方法で行った. 本年度得られた主な結果: (1)基板試験片は,ある荷重繰返し数(N_d)で,静的試験の場合と同様に,基板と球圧子との接触円領域の若干外側にリングクラックが発生する.N_dは明確にP_<max>に依存し,P_<max>,低下に伴ってN_dは増加する.P_<max>-N_d関係は2R依存性を示し,2Rが大きくなるに従ってP_<max>は大きくなる.ガラス基板の場合,同じN_dに対するP_<max>は,強化ガラスの方が明らかに大きい.P_<max>-N_d関係から求めた,基板表面の半径方向の応力σ_<r.max>とN_dの関係は,2Rにほとんど依存しない.非強化ガラスと強化ガラスのσ_<r.max>-N_d関係におけるσ_<r.max>の差は,強化ガラスにおける残留応力を表していると考えられる. (2)TiN被覆WC・Coのσ_<r.max>-N_d関係より,寿命が短い範囲では,疲労強度は静的強度よりあまり低下しないが,寿命が長い範囲では,明確な低下傾向を示す.N_d=107の時間強度を疲労限度とすると,700~900MPaであり,静的強度(平均値2050MPa)の35~45%である. (3)TiN被覆WC・Coの結果より,P_<max>が大きい場合は基板にもき裂が発生するが,小さい場合は,発生しない.基板のき裂は,薄膜のき裂により引き起こされたと考えられる.TiN被覆ガラスの場合は,基板にリングクラックが発生し,そのき裂によって薄膜にリングクラックが発生する.
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