Research Abstract |
平成22年度までに構築したMulti-phase-fieldモデルと転位-結晶塑性モデルを運成させ,核成長と変形にともなう転位密度変化を結晶の硬化係数に反映させた.蓄積した転位密度に立脚した核生成のクライテリオンを設け,変形過程における核生成を考慮した動的再結晶モデルを構築した.さらに,本モデルに基づいてマルチフィジックス解析を行った.粒界等の高転位密度サイトに生成された再結晶核に対して,Phase-field解析を行えば,転位の蓄積エネルギー差が駆動力となって再結晶核が成長を開始する.このとき,母相が新相へと変化した領域では,転位密度およびすべり値を初期化し,核成長解析から得られた情報を結晶塑性有限要素法に与え,変形解析を実施した.更新された転位密度を差分格子点に戻し,再度核成長解析を行うことによって,塑性変形に伴う動的再結晶現象を数値解析的に表現した.その際に,転位密度に立脚した核生成のクライテリオンとして,臨界転位密度を定義し,その値に達した一つの有限要素の重心から臨界核半径内に存在する有限要素がほぼ臨界転位密度を満たしていれば,その領域を再結晶核とするとした.本研究では,転位-結晶塑性モデルはFEMを用い,Multi-phase-fieldモデルはFDMを用いてFEM-FDMハイブリット解析を行った.解析から得られた微視組織の発展とマクロな応力-ひずみ曲線の増減との関係を考察した結果,以下の知見を得た.蓄積転位密度に基づくクライテリオンを用いて核生成モデルを構築すれば,副次的核生成を考慮した動的再結晶解析が可能となり,応力-ひずみ線図が硬化と軟化を複数回繰り返す様子が再現される.また,得られたマルチフィジックスモデルを用いて数値解析すれば,易動度の変化によって結晶成長と加工硬化のバランスが変わり,それに応じて応力-ひずみ曲線が異なる挙動を示す様子が再現される.
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