2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560150
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
野口 昭治 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80349836)
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Keywords | 玉軸受 / 転動体公転滑り / 必要最小荷重 / 音上昇 / 振動上昇 / 摩耗 |
Research Abstract |
今年度は3年計画の最終年度であり、小型玉軸受の必要最小荷重に関する研究をまとめる年度である。玉軸受に作用する荷重が小さいと転動体の公転滑りが上昇すると考えて、過去の年度において、693、695、608の3型番について、転動体公転滑りを測定できる装置を開発し、アキシアル荷重と回転速度を変化させて公転滑り率の変化を観察した。 転動体の公転滑りが大きくなると、転動体と軌道面の滑りが増加するので、摩耗が起こり、軌道面が荒れて音・振動が上昇する。そこで軸受の必要最小荷重としては、内輪が実用的な回転速度より大きめの18000min-1迄において、"転動体の公転滑りが上昇しない荷重"と定義して、それに該当する等価荷重(P)を求めた。そして、その等価荷重が基本ラジアル動定格荷重(Cr)の何%に相当するかを算出したところ、3型番ともP>0.65%Cr以上であれば、18000min-1まで転動体の公転滑り率は上昇せず、安定して回転することがわかった。 この必要最小荷重は、カタログに経験的な値として記述されている必要荷重(1%Cr)より幾分小さな値となったが、それほど大差ない値である。また、カタログ値は設計的に考えれば、より安全な値であると言えることが明らかとなった。本研究は軸受内部で最初に起こりえる不具合を考慮して、実験によって必要最小荷重を明らかにした初めての研究であり、経験ではなく実験的根拠に基づいた値であることに価値がある。 本研究によって、これまで根拠が曖昧であった小型玉軸受の必要最小荷重に関して、実験的な根拠に基づく必要最小荷重を定義できるようになった。課題としては、アキシアル方向の荷重を負荷した実験だけであったが、ラジアル荷重も同時に作用する合成荷重条件で実験を行い、Crとの比率を求める必要がある。
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